2014年01月14日

「新生の街」

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S・J・ローザン (S.J. Rozan) 著
直良 和美 訳
東京創元社 出版

 リディアとビルが活躍する「チャイナタウン」「ピアノ・ソナタ」に続く第三弾です。視点がリディアに戻って、ニューヨークのチャイナタウンならではの話題が復活しています。

 このシリーズをここまで飽きずに読む進められてきた理由を考えてみました。まずは、物語の構成のバランスが心地よいことだと思います。たとえば、リディアを通して、駆け出しの探偵の苦労を察することも、中国系移民の立場を知ることもできますし、ビルを通して、探偵として一人前になるまでの道のりを垣間見ることも、白人の立場を想像することもできます。

 それより何より、リディアとビルが活躍するこの(携帯電話どころかポケベルを買うのにも決断を要する)時代に、若い女性であるリディアが自ら見つけだしたやりたいことをやり遂げるために、家族や男性陣と闘う姿に共感を覚えるからだと思います。そして、そんなリディアを仕事上のパートナーに選んだビルも好ましく見えます。

 そんなことに思いが至ったのは、今作では、リディアのほかにも自らが選んだ道を進もうと奮闘する姉妹が登場するからです。姉と妹は、性格も違えば、目指すものも違いますが、ふたりとも自分が欲しいものがはっきりとわかっている点に好感がもてました。

 次の作品も読んでみたいと思います。
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