
松井 栄一 著
小学館 出版
最初のページから、「え、そうなの?」と思わせられました。
<<<<<
ほとんどの方が、『大辞泉』や『広辞苑』などを"大型"辞典と考えているかもしれません。
>>>>>
わたしは『広辞苑』の電子版を愛用していますが、そう思っていました。そして、それを軽く超える辞書があるとも知りませんでした。その辞書の名は、『日本国語大辞典』だそうです。初版全二十巻、第二版全十三巻と別巻というボリュームのうえ、収録語数は五十万を超えるそうです。広辞苑第六版で24万語らしいので、語数だけ比較しても倍以上ということになります。
そんな辞書の編纂に二度(初版と第二版)も携わった方がこの本の著者です。なにしろ人々が日々使うなかで変化していく日本語を捕捉すると考えただけで頭が痛くなりそうですが、それを苦労を苦労とも思わず充実した時間を過ごせたと受けとめられている著者の謙虚さからは、清々しさを感じました。
そのうえ普段わたしが気にもとめなかったことが、さまざまな視点から話題に取りあげられていて、読んでいて飽きる暇がありません。言葉を知り尽くしている方の豊かさだと思います。
どの話題も興味を惹かれましたが、驚いたのは、外来語の増え方を示す数字です。
外来語が多い五十音は、「は」〜「はいん」の区間だそうです。たとえば1891年の『言海』で0.6%だったのが、1938年の『言苑』で11%になりました。このあいだおよそ50年です。さらに50年ほど経った1992年の『三省堂国語辞典第四版』では36%になりました。
外来語の浸透速度は加速するばかりかもしれませんが、少なくとも日本語を書くときは、外来語に頼り過ぎないようにしたいという気持ちが起こりました。