
アンナ・ヤンソン (Anna Jansson) 著
久山 葉子 訳
東京創元社 出版
とりわけ気に入ったのは、場面の切り替えと人物描写です。
「それで何がわかったの?」「そこからどうなるの?」といった類の問いかけをしたくなるような場面で巧みにシーンが変わる作品なので、策に嵌ってしまっていると思いつつも、先を読んでしまいました。
また、おもな登場人物である3組の家族と女性刑事は、それぞれがその人なりの切実な問題を抱えています。離婚のあとの再出発を模索したり、夫婦の関係を修復しようと試みたり、別れた夫から子供との面会権を剥奪しようと奮闘したり、自分に関心をもってもらおうと足掻いたり、それぞれが家族、友人、恋人などに対して葛藤を抱えているさまが、ひしひしと伝わってくる描写で、惹きこまれてしまいました。
ただ結末が唐突に感じられました。それまでこと細かに描写してきた内容と直接的には関係しない事件だったことが、唐突に感じられた理由だと思います。少しばかり度が過ぎた意外性といったところでしょうか。
ただ読んでいるあいだは、スウェーデンのゴッドランド島の世界に入り込めたので、全体的には好感がもてた作品でした。