2007年05月23日

「あきらめない人生―ゆめをかなえる四〇からの生きかた・考えかた」

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池田 理代子 著
海竜社 出版

 長い期間において各種メディアに掲載された記事をまとめたものなので、全体としてのまとまりは欠けるものの、自分の死への準備を考えさせられる1冊でした。

 著者は、あの有名な「ベルサイユのばら」を描いた池田 理代子氏。私はこの本を読むまでは知らなかったのですが、彼女は40歳を過ぎてから、華麗なる転身を遂げています。45歳のとき、成功に満ちた華やかな劇画作家としての道をすっぱりと退きます。その後の猛勉強の成果で優秀な試験結果をおさめ、45歳のとき東京音楽大学に入学し、声楽を勉強します。厳しいレッスンに耐え、4年後に卒業。オペラなどの舞台で活躍するプロの声楽家になります。

 何が彼女をこうさせたか。それは彼女の後悔に対する価値観と死への準備でした。
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 しかしそれでも、できるものならばあまり大きな悔いを残したくないものだと思います。中でも私にとって最も恐ろしいと思える悔いがあります。
 それは、「あのときに、あんなことをしなければよかった」というという後悔ではなくて、「あのとき、あれをどうしてやっておかなかったんだろう」という後悔です。
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 してしまったことを悔やむことは耐えられても、しなかったことを悔やむことは耐えられない。そう思う彼女が、人生の折り返し地点といわれる年齢に達したとき、やりたいと思ったことをすべて書き出し、自分の努力で道が開ける可能性があるもののなかから選んだのが、声楽の道だったというわけです。

 あれだけ有名になり、作品は飛ぶように売れているのに、その道を退く決心は並大抵のことではないでしょう。彼女自身、未練があったことも認めています。

 「よく生きることと、よく死ぬことは表裏一体」

 彼女はそう書いています。死を意識し、死の準備をするということは、よく生きるということなしにはありえない。つまり、死の際に後悔しない生き方をするために、今持っている、人もうらやむ劇画作家としての自分と決別してでも、やりたかった声楽をやらずにはいられない。そういう強い思いが、彼女を華麗なる転身、次への成功へと導いたのでしょう。

 その彼女の生き方そのものが、それぞれの人に、その人だけが感じられる何かを与えることと思います。
posted by 作楽 at 00:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(エッセイ) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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