
中野 京子 著
角川書店 出版
表紙は、ラ・トゥールの『いかさま師』の一部分です。見る人に強烈な印象を残す、胡散臭い人たちの目つきのせいで、この作品が「怖い絵」に挙げられたのは、納得がいきます。
そのいっぽうで「怖い絵」に挙げられたのが意外な見慣れた絵もあります。たとえば、ドガの『舞台の踊り子』。『エトワール』とも呼ばれているこの絵は、舞台の袖が見えているものの充分に華やかさがあって、怖い絵などと思ったことはありませんでした。それが、著者による解説を読むと、この絵が違って見えてきます。異なる文化や時代のものを鑑賞するときは、その背景を知っているかどうかで印象が違ってくるのだと、あらためて思いました。
はじめて知った絵もありましたが、いかにもこれは怖い絵だと直感的に思う絵のグループと一見平和に見える絵のグループからそれぞれ3点ずつ選んでみました。
<いかにも怖い絵>
1. 『我が子を喰らうサトゥルヌス』(ゴヤ)
構図などこの絵には関係ないと思わせる圧倒的迫力です。
2. 『イワン雷帝とその息子』(レーピン)
狂気が伝わってきます。
3. 『ホロフェルネスの首を斬るユーディト』(アルテミジア・ジェンティレスキ)
並々ならぬ覚悟と気迫が感じられます。
<一見平和な絵>
1. 『グラハム家の子どもたち』(ホガース)
裕福な家庭で大切に育てられている可愛い子たちなのに……。
2. 『ガニュメデスの誘拐』(コレッジョ)
このあとに待ち受けていることを知っているのか……。
3. 『舞台の踊り子』(ドガ)
現代のバレエとのギャップが大きくて……。