
佐藤 愛子 著
小学館 出版
中学生か高校生のころ、佐藤愛子の『怒り節』エッセイを読んで、笑いに笑ったことを思い出し、久しぶりに読んだのですが、昔のように笑えませんでした。
笑えないのは、著者とわたしの考え (あるいは年齢) が近くなっていて新鮮味が欠けるからか、笑い飛ばすような余裕がわたしになくなっているからか、よくわからないと思いつつ読み進め、ふと思いつきました。かつての著者は理不尽なことがらに真剣に怒っていて、その『怒り節』が痛快で笑えたのではないかと。
誰もが非難されないよう気を配り、そのいっぽうで些細なことを気に病み、人と人との絆を失い、正論を振りかざす現代に著者が嘆いているさまを読んでも笑えないのは当然かもしれないと思いました。
この本がベストセラー入りをしたということは、読者もみな嘆いているのでしょうか。