原田 宗典 著
幻冬舎 出版
「し」と読む漢字にまつわる話題を集めたエッセイです。少しかたい話題からやわらかい話題までいろいろです。
かたいほうの話題の「詩」では、著者が好きな詩論が引用されています。
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詩にもいろいろの種類があると思う。僕の詩は、どういう詩か知らないし、人によっては詩とは云えないと言うかもしれない。自由詩というべきものか。僕は詩のことを特別に研究したものではない。ただ何かかいている内に、だんだん調子が高くなり、羽の生えたコトバが生れる。その時おのずと詩が生れるのだと自分は思っている。少くも僕はそういう詩を書くのだ。散文は足で地面の上を歩くようなものだ。はう時も、歩く時も、馳ける時もある。しかしまだ地面からはなれることが出来ない。飛行機が滑走していて、地面から離れられないような時、まだ詩は生れない。しかし地面からはなれた時、詩になる。少くとも自分ではそう思っている。人間の挙動も詩になると舞踏になると思う。言葉に羽が生えると詩になる
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わたしは詩を読むことがほとんどないのですが、空よりも地べたが好きなのかもしれません。正確には、地べたを這う以外、能がないように思います。
やわらかいほうの話題の「仕」では、執筆のために熱海に泊まったときの様子が書かれています。日本の作家、学者、芸術家の中でもごく限られた人たちが宿泊を許される施設だそうで、仮名で登場します。三島由紀夫、川端康成、志賀直哉などの文豪が使った調度に触れたときの著者の感動は、挙動不審ともとれて、和みます。豪快な朝食など意表をつく体験談でした。

