吉本 ばなな 著
新潮社 出版
著者が、海燕新人文学賞を 20 代前半という若さで受賞した当時、驚きました。受賞作「キッチン」を読み、観察力というか、人というものがよくわかっているという印象を受けたからです。
時を経てまた著者のこの文章を読み、人のことがいろいろと見えてしまう自分を受け容れて、そのうえでできることやすべきことを構築されていると感じました。この著者がこの本に書かれているというのでしょうか。
巻末には、お父さまの吉本隆明氏との対談があります。そこで、『本当のいい小説というのは、その中に必ず半分以上は自分自身が書かれています。他人の名前だったり、違う物語になったりして、表面的には姿を変えていても、「あ、これを書いた人はこういう人なんだ」と、わかる部分が必ず半分は入っている』とお父さまのほうが語っています。
それを読んでわたしは納得できました。好きな小説の『好き』には、その物語を通して作家を見て、共感したり憧れたり感動したりすることも多分に含まれているのでしょう。
この作家が書くことによって為したいことは、この本のタイトルにもあらわれています。楽曲のほうの「イヤシノウタ」の忌野清志郎氏の歌詞が冒頭に掲載されていて、この本に収められた文章とよく通じているように思います。

