
佐藤 雅彦/菅 俊一 原作
高橋 秀明 画
『行動経済学』とは、有斐閣の経済辞典によると、実験などで繰り返し観察される行動様式を取り入れて経済主体の行動の公理をつくり,それを基に理論を構築する手法の経済学のことだそうです。
行動経済学者リチャード・セイラーは、行動経済学によって得られた知見は、普段の生活の中で、非合理的な行動を起こしそうな時に、わたしたちをナッジ (nudge:注意をひくために、人を肘でそっと小突いて知らせる) ためのものになっていくべきと述べています。
つまり、非合理的な自分たちの行動を知り非合理な判断を避けるため、行動経済学を学ぶことは有益であるというわけです。
ただなかには、マイペースなわたしには当てはまらないと思える行動パターンが稀に紹介されていました。たとえば性格診断を使って説明されていた『バーナム効果』です。提示のされかたによってわたしたちは、実際はどんな人にでも当てはまる性格に関する記述を自分のためのものとして解釈してしまうことがあるそうです。これにより、占いなどで何に対しても『当たってる!』と思ってしまうようなことが起こります。例として用意された性格診断を読んで、わたしには当てはまらないと思ったわたしは性格に偏りがあり、バーナム効果が及ばないのかもしれません。著者が期待していない学びを得られました。
逆に、期待されたとおりの学びがあったのが『代表制ヒューリスティック』です。わたしたちは様々な物事を見聞きしたときに、すでに抱いているイメージに囚われて偏った判断をしてしまうことがあります。その心のはたらきが『代表制ヒューリスティック』と呼ばれます。
なぞなぞ形式で問われます。『ある教授のお父さんのひとり息子が、その教授の息子のお父さんと話をしていますが、その教授はこの会話には加わっていません。こんなことは可能でしょうか。』
答えは『可能』です。性別が限定される単語が 2 種類出てきますが、教授の性別には触れられていません。女性なら可能なわけです。でもなんとなく男性だと想定してしまいます。それが『代表制ヒューリスティック』というわけです。自分が抱いた漠然としたイメージに悲しくなりましたが、いい勉強になりました。