2019年12月26日

「目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】」

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中野 剛志 著
ベストセラーズ 出版

 にわかには信じがたい理論が披露されていますが、素人判断ながら理論的に破綻しているようには見えませんでした。

 著者はまず『合成の誤謬』という概念を紹介しています。これは、ミクロ (個々の企業や個人) の視点では正しい行動も、その行動を集計したマクロ (経済全体) の世界では、反対の結果をもたらしてしまうようなことを指しています。

 デフレ下で支出を切り詰めて楽になろうとしたら、それがさらなる需要縮小を招き、デフレが続いて、生活がますます苦しくなるデフレも『合成の誤謬』のひとつだということです。

 言い換えれば、赤字の垂れ流しを止めるのは個々の家計では正しいのですが、財政赤字を削減しようとすることは負の結果を招くということです。でも、日本国債を発行し続けるような状況でいいのでしょうか。それに対し著者はこう語っています。
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財政赤字の制約となるのは、民間部門の貯蓄ではない (財政赤字は、それと同額の民間貯蓄を創出するから)。
財政赤字の制約となるのは、政府の返済能力でもない (政府には、通貨発行権があるから)。
財政赤字の制約を決めるのは、インフレ率である。インフレになり過ぎたら、財政赤字を拡大してはいけない。
財政赤字を無限に拡大できない理由は、そんなことをすると、ハイパーインフレになってしまうからである。
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 こう言われると、通貨とは何かがわからなくなります。著者は、信用貨幣論によれば、貨幣には現金貨幣と預金貨幣があり、後者の場合、預金が先にあって、貸出しが行なわれるのではなく、貸出しが先にあって、預金が生まれる、つまり、国債発行によって預金が増えて貨幣供給量が拡大し、それが需要の拡大を意味するというのです。

 しかし、肝心なことは、一般大衆のマインドではないでしょうか。そういう理屈を国民の多くが理解しなければ、この理論の正しさを試すことは叶わないような気がしました。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | 和書(経済・金融・会計) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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