2020年12月14日

「だから、もう眠らせてほしい」

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西 智弘 著
晶文社 出版

 著者は、緩和ケアに従事する医師で、安楽死を望む患者の意思にも一定の理解を示すものの、たとえ安楽死制度があっても、自発的に死に向かおうとする人をひとりでも減らしたいと考えています。

 そんな姿勢の著者が、実際に安楽死を希望した患者を診察した経験から、ご自身の考えを深めていったプロセスが、この本には書かれてあります。そのため、先ごろニュースになっていた ALS 患者のように身体的自由を失われた精神的苦痛がおもな理由と思われるケースなどは含まれず、安楽死を包括的に議論するということではありません。

 それでも著者が辿ったプロセスを読むと、共感できる部分と共感できない部分があることに気づかされました。

 自分のものとは違う考え方だと感じたことのひとつは、『日本と欧米では、死は個人のものなのか、家庭内のものなのかという文化的概念が異なる』というものです。たとえばオランダでは個人の生き方を尊重した結果、安楽死が増えているが、日本では安楽死制度があっても、周りの人たちに支えられていれば、安楽死は選ばないという意見です。わたし自身は、現代においてその対比は疑わしいと思っています。

 逆にそのとおりだと思ったのは、『安楽死に関係する人が強い人と弱い人に二極化している』という考えです。生き方と同様死に方を選ぶ発想から安楽死をひとつの選択肢として考える強い人がいるいっぽう、日本が貧しくなって相互援助が成り立ちにくい状況のなか周囲から見捨てられて安楽死しか選択肢がないように感じる弱い人がいるという意見です。その状況で良いというつもりはまったくありませんが、その現実を直視して議論していく必要はあると感じました。

 身近なところで緩和ケアを見た結果、自分が癌の終末期を経験するとしたら、持続的鎮静を選びたいと思うようになったので、医療の現場が鎮静をどう捉えているかわかったことは良かったと思います。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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