2021年02月05日

「オビー」

20210124「オビー」.png

キム・ヘジン 著
カン・バンファ/ユン・ブンミ 訳
書肆侃侃房 出版

 以下の 9 篇が収められています。

−オビー
−アウトフォーカス
−真夜中の山道
−チキン・ラン
−カンフー・ファイティング
−広場近く
−なわとび
−ドア・オブ・ワワ
−シャボン玉吹き

 著者プロフィールによると、このなかの「チキン・ラン」が 2012 年に東亜日報の新春文芸に選ばれたことをきっかけにデビューした作家で、「オビー」が 2016 年に『今年の問題小説』に選ばれたそうです。

 周囲から肯定的な評価を得ることが少ないであろう人たちが数多く登場する短篇集です。「チキン・ラン」では、チキンのデリバリーをする男性と自殺しようとする男性のあいだで、悲壮感があるものの同時に滑稽にも聞こえるやりとりが繰り広げられます。

 「オビー」では、人との関わりが苦手なオビーが、Amazon の配送センターのような場所で非正規労働者として働き始め、陰日向なく勤めたにもかかわらず、職場で居場所を失っていくさまが描かれています。

 社会に必要とされてはいても低賃金で働く人々の暮らしは韓国も日本も似たような状況にあるように見えるいっぽう、まったく理解できない作品もありました。

「広場近く」は、見ず知らずの男から 6 歳の子供を預かった男の話です。そんな幼い子を他人に預けて仕事に行く無茶な設定が韓国ではリアリティをもって受け入れられるのかと驚きました。

「真夜中の山道」にいたっては、訳者あとがきの状況説明を読まなければ、どういった場面か理解できませんでした。説明によると、再開発が進む地域の強制撤去部隊として雇われた男たちと、籠城闘争を決起した人たちの側にアルバイトの市民運動家として参加する女が戦っているそうです。対価と交換に暴力をふるっている人々だということはわかりましたが、市民運動を生活の糧にして暴力をふるうといったことが、本当に世の中に起こっていると受けとめていいのか迷いました。

 韓国という国を垣間見ることができる短篇集でした。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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