
永田 ゆかり 著
SBクリエイティブ 出版
データを活用したいけれど、どう活用すればいいのかわからないというエントリレベルの方々に参考になる情報が載っています。
わたしは、グラフなどの資料を見て、『メッセージが読みとりにくい』『何を伝えたいのか見えない』などの所感を抱くことが多い割に、どういった改善案を提示すればいいのか、わかっていませんでしたが、そのヒントがこの本にありました。新たな情報を脳が受けるときにかかる『認知的負荷』を下げるよう、著者は助言しています。つまり、詰めこみすぎに注意すべきということです。
たとえば、色の多用をやめ、グレーのみにするとか、際立たせたい部分のみカラーをつけるとかの工夫が必要です。3 色を限度にカテゴリ別に色分けするのもいいかもしれません。(人間が一度に認識できる色の数は 8 色までと言われているそうです。)
タイトルなども、中立的にするのか、意見を前面に出すのかなどを充分に練ったうえで絞りこみ、そのうえで重要なことは大きく表示します。あわせて、フォントの種類なども極力減らします。
罫線や凡例なども、本当に必要か吟味します。そうして、絞りこんだ結果として空白が生じても、恐れる必要はありません。少なさなど何かを語る空白は、そのままにしておくべきです。
またわたしは、『やって (加工して) みないとわからない』ということも度々言っている気がしますが、その点についても、何を見てみるのかわからない方もいるのではないかと気づかされました。
棒グラフで量を比べてみる、円グラフで割合を見てみる、折れ線グラフで推移を見てみるあたりまでは、実践できる方が多いかもしれませんが、その先に何を試してみるかを伝えるべきだったように思います。
たとえば、推移を見るときも一般的な折れ線グラフのほか、ヒートマップやエリアチャート (面グラフ) を作成してみたり、要素が多くトレンドが異なる場合は、折れ線を分けるスパークラインを活用するという方法もあります。
さらに、まったく別の観点から、分布や関係性に注目したり、地図を使って視覚化するという方法もあります。ヒストグラムや箱ひげ図 (ボックスプロット) を活用すると、分布傾向を把握できます。散布図や散布図よりさらに変数をひとつ増やしたバブルチャートを作成すると、関係性を俯瞰することができます。昔と違って、コロプレス図などもフリーソフトで作ることができるので、感覚的に把握できる地図を利用しない手はないと思います。
数字の羅列を視覚化するための引き出しを少しずつ増やす方法を具体的に知ることができました。