2021年10月21日
「IPO セカンダリー株投資」
柳橋 著
すばる舎 出版
タイトルを見て、意味が理解できませんでした。IPO (Initial Public Offereing:新規公開株式) であっても、セカンダリー (Secondary Market:流通市場) に入ってしまえば、ほかの株式と同じではないかと思ったからです。しかし、IPO から半年くらいは、ボラティリティが大きいなど IPO 株としての性質が意識され、このような呼ばれ方をするそうです。勉強になりました。
ついでに、デイトレーダーの方々が IPO 株のどういったところを見ているのか、少し理解できました。著者の場合、次の 10 項目をもとに IPO 株が値上がりしやすいか判断されているようです。
@ 創業から 20 年以内の IPO か……これに該当すると、会社の勢いが評価され、人気株になる可能性が高くなります。逆に、上場廃止後の再上場や IPO 直前の社名変更などは、ネガティブな要素になります。
A 公募株比率が高く、売出株比率が低いか……その会社の経営者などが保有していた株が売り出される売出株比率が高いと、企業に資金が入らず成長が見込みづらいので、公募株比率が高いほうが評価されます。
B 上場市場がマザーズかジャスダックか……あくまで IPO 株の値上がりという観点からの評価項目です。新興市場のほうが、小規模な IPO が行われやすく、需要に対する供給が追いつかず、価格が高騰しやすくなります。ただ、誰もが知っている企業の場合は例外で、東証 1 部上場でも価格高騰が見込まれます。
C 業績が良好か……上場前数年間にわたって増収増益を続けている企業のほうが、当然ながら価格が高騰しやすくなります。
D 公募売出数が少ないか……著者の見解によると、マザーズやジャスダックの場合、需給バランスから 50 万株以下が望ましい規模です。
E 事業内容に新規性があるか……類似の企業が市場に存在しない場合、参考となる企業がなく、新たな適正価格を探ることになり、株価がオーバーシュートする可能性が高くなります。
F 市場からの資金吸収額が少ないか……需給バランスから、マザーズなら 30 億円以下、ジャスダックなら 20 億円以下の資金吸収額が著者のお勧めだそうです。
G 公開時時価総額が小さいか……需給バランスから、マザーズなら 200 億円以下、ジャスダックなら 100 億円以下の時価総額が著者のお勧めだそうです。
H ストックオプションリスクが小さいか……ストップオプションの付与数が多いと、上場後に大量に売却されることが見込まれ、上値が限定的になるためです。
I ベンチャーキャピタルリスクが小さいか……これもHと同じ理由です。ただ、ベンチャーキャピタルの場合、『ロックアップ』と呼ばれる、上場後一定期間あるいは一定の株価になるまでは売却できない制限があります。ロックアップとベンチャーキャピタルの持ち株比率を勘案し、どのくらい上値の重しになるかを見る必要があります。
今のところ、こういう株式投資に興味はありませんが、これまでと毛色の異なる本に触れてみると、全然知らない世界を垣間見ることができ、良い頭の体操になりました。
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