2021年11月11日

「パッセンジャー」

20211111「パッセンジャー」.png

 長篇小説の場合、目次がないこともありますが、本作には、女性のものと思しき名前ばかりが並ぶ目次があります。最初に見たとき、翻訳小説でよく見かける登場人物一覧かと一瞬勘違いしてしまいました。

 読み進めるうち、この目次にある名前は、主人公が次々と変えていく偽名だと気づきます。しかし、偽名を使って逃げなければならない羽目になった最初の原因はずっと謎のまま。身分証明書もなく転々と居場所を変える主人公の生活は、サスペンスそのものです。

 帯に『すべてが伏線。二度読み必須』と書かれてあり、スリル満点の主人公の逃亡を読み進めながらずっと、意外な結末を期待していましたが、読み進めていくうちに固まっていくイメージどおりの結末でした。いたるところにヒントがありましたが、特に役に立ったヒントは、登場人物一覧かと思うような目次と、原作が 2016 年に出版されている点です。

 なぜ主人公は逃げているのか、結末はどうなるのか、その 2 点が気になって、勢いよく読み進められましたが、サスペンスやミステリにもあって欲しいとわたしが期待するピースが欠けていたような気もします。それは、主人公が出会った青い瞳の女性の人物像です。

 主人公の逃亡が彼女のの視点で語られているため、彼女の価値観、行動力、個性などが詳細に描かれていて、主人公の人物像を作りあげることができたのとは違って、結末に大きな影響を与えたにもかかわらず、青い瞳の女性がどうしてそういう行動に出たのか、どのようにそんな結論にたどり着いたのか、はっきりとイメージできなかった点が少し残念でした。

 青い瞳の女性が目立ちすぎると、鍵を握る人物だとあらわになってしまい、先が見えてしまうと考えた結果の工夫かもしれませんが、矛盾する行動をとった人物のようにも思え、すっきりと読み終えられませんでした。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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