2021年11月27日

「グローバル金融規制と新たなリスクへの対応」

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佐々木 清隆 著/編集
きんざい 出版

 一橋大学大学院経営管理研究科の 2020 年度コースの内容をもとに、これまでに金融庁に関係した方々が執筆した本です。金融規制のクロスボーダー対応や COVID-19 を原因とするリスクの捉え方などを知ることができるかと思い、手にとりました。

 金融規制に関する国際的な枠組みが、次のようにまとめられていました。普段あまり意識していませんが、リーマンショック以降、粛々と整えられてきた様子がうかがえました。

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 そういった国際的な取り組みで意外に思ったのは、免許等を受け恒常的なモニタリングの対象である銀行等金融機関のうち、海外拠点を有する社につき、本社を監督する母国・ホーム当局と支店等海外拠点を監督するローカル・ホスト当局間の二国間での連携が意外にも進んでいる点でした。この章を執筆した佐々木清隆氏によれば、ホーム・ホスト当局間では個別海外拠点に関する、また個別取引や個別のスタッフ等に関する詳細な情報が共有されている反面、当該金融機関の本社がそのような海外拠点の問題を把握していない事例が散見されるとのことです。

 金融機関内部の監査能力が高くないことは、不祥事報道などから、薄々感じていましたが、監督機能が国境を越えて正常に働いている点は、わたしが抱くイメージとは少し違っていました。

 また、タイトルにある『新たなリスク』について、わたしは、COVID-19をきっかけとしたリスクと思いこんでいましたが、ほかにも『コンダクトリスク』というものがあることを初めて知りました。コンダクトリスクについては、必ずしも共通した理解が形成されていないとしつつも、@利用者保護に影響する行為、A市場の透明性や公正性に影響する行為、B金融機関の風評 (reputation) に影響する行為等につながり、結果として企業価値が大きく毀損されるものなどと、この本では説明されています。

 具体的には、SDGs や気候変動への対応などがあげられ、法令上求められていなくとも、対応することが期待され、またそれがビジネスモデルの持続可能性にもプラスであると考えられているものに反する行為はリスクになるということです。

 とてもわかりやすかった例としては、2019 年に起きたリクナビ問題です。個人情報保護法制に違反するか、労働法制に違反するかは微妙なところもありますが、少なくともリクルートに個人情報を提供している学生の心情をまったく顧みないサービスだったので、『コンダクトリスク』の発現からサービス廃止まで追い込まれた典型的な事例だと、この章を担当した竹内朗氏は語っています。

 データを提供した利用者たちの同意もなく、『内定辞退率予測』といったセンシティブな情報を売って儲けることがビジネスとして真っ当かどうか考えられないのは、リクルートに限ったことではないと、ひとりの消費者として思うことが多くなったので、この『コンダクトリスク』というものを今後も折に触れて考えていきたいと思いました。
posted by 作楽 at 20:00| Comment(0) | 和書(経済・金融・会計) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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