
エディス・エヴァ・イーガー/エズメ・シュウォール・ウェイガンド (Edith Eva Eger/Esmé Schwall Weigand) 著
服部 由美 訳
パンローリング株式会社 出版
著者は、16 歳でアウシュヴィッツ強制収容所に送られるという経験をした心理学博士です。そんなイーガー博士が『心の監獄』ということばで表現しているものが何なのか、興味を惹かれました。
実際に読んで思ったのは、『心の監獄』は、誰にあってもおかしくないだけでなく、意外にもその監獄に自ら進んで閉じこめられている人が多いのではないか、誰にでももっと自由になる余地が残されているのではないかということです。
たとえば、レッテルや役割も監獄になると著者は、書いています。『期待に、自分には果たすべき特定の役割や仕事があるという気持ちに閉じ込められること』は、誰にでもありそうです。わたしも、周囲からの期待に沿うことばかりに気をとられ、自身がどうしたいかを考えたり、その考えを誰かに伝えたりする努力をしてこなかったことに思い至りました。
著者は、『人の子ども時代が終わるのは、誰かがイメージした自分の中で生きるようになったとき』だと書いています。その判断基準に従えば、わたしは小学校にあがる前後で子ども時代を終えたことになります。ただ、わたしの未熟さを考えると早すぎる終わりだったようです。だからそのあと、『いい子』でいることを強硬に拒絶した時期もありました。いま思うと、そうしたかったというより、『いい子』でいるための我慢を止めたくてもうまく止められなかっただけのような気もします。
過去の自分をこれまでよりは理解できた気がします。