2022年07月18日

「スマホ脳」

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アンデシュ・ハンセン (Anders Hansen) 著
久山 葉子 訳
新潮社 出版

 超大手電機メーカーで研究開発をしている方が、人を豊かにするためにデバイスを作っているつもりでいたけれど、デバイスが暮らしを豊かにしているとは限らないかも……と、この本の感想を漏らしていました。

 精神科医である著者は、睡眠、運動、そして他者との関わりが、精神的な不調から身を守る 3 つの重要な要素だと説明します。逆に、スマホは、精神的な不調の原因となっている可能性が高いと指摘しています。

 医学博士だけあって、SNS などに費やすスクリーンタイムと精神的な不調の相関関係を示す数多くの研究結果を理由に、因果関係を断定するようなことは避けていますが、それでもわたしは、この作家が主張する、デジタルライフの悪影響を看過すべきではないと感じました。特に若い世代への影響は、少なくないと思います。

 信じた根拠は、わたしたちの『脳はこの 1 万年変化していない』、つまり、食べ物や安全が得やすくなった、今の『余裕のある環境に、自然はまだ人間を適応させられていない』と、この作家が語っていることにあります。

 この 200 年ほどのあいだに、わたしたちの暮らしは劇的に変わりました。でも、わたしたちが長年受け継いできた遺伝子には、『新しいもの、未知のものを探しにいきたいという衝動』が、まだしっかりと組み込まれています。

『スマホには人間の報酬系を活性化させて注目を引くという、とてつもない力』が備わっていることがわかっています。これはかつて、あらゆる刺激に迅速に対応できるよう、警戒態勢を整えておく必要があったことに起因します。つまり、わずかな気の緩みが命の危機につながる可能性があったため、何事も見逃さないよう、ドーパミンという報酬を与えてマルチタスクをさせ、簡単に気が散るよう、人間は進化してきたというのです。

 しかし、現代では状況が異なります。自動化や人工知能の普及により、集中力を要するクリエイティブな仕事をしない限り、人の価値が認められなくなりつつあります。現代に生きるわたしたちは、集中力が奪われやすいデジタル社会において集中する必要があり、スクリーンタイムを制限し、睡眠や運動や他者との関わりに時間を振り向ける必要がありそうです。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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