2022年09月25日

「いまどきのニホン語 和英辞典」

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デイヴィッド・P・ダッチャー (David P. Dutcher) 著
研究社辞書編集部 編
研究社 出版

 研究社の「新和英大辞典 第 5 版」とそのオンライン版から、くだけた表現、俗語、流行語、芸能やスポーツの業界用語が集められたのが本書です。通読してみたら、日本語と英語の相違点や類似点に気づくことができました。

 日本語と英語の相違点として一番印象に残ったのが、日本語は、擬音語・擬態語が多い点です。本書では、漫画の英訳を例に、日本語の擬音語・擬態語のニュアンスを英語で伝えるための工夫が 3 種類紹介されています。

 ひとつめは、擬音語・擬態語を無視あるいは簡略化する方法です。たとえば、「のだめカンタービレ」の『ぴぎゃーっ』という悲鳴は英訳版では単に『aaah!』や『eeek!』(きゃーっ、ひゃーっ) となっているそうです。

 ふたつめは、擬音語・擬態語を動詞で代用する方法です。たとえば、抜き足差し足で歩くシーンの『ソ〜』という擬態語は、『こっそり歩く』という意味の動詞を用いて『sneak』、放心状態のシーンの『ぼーっ』は、『ぼんやりする』という動詞『daze』、あざ笑うシーンの『ニヤリ』は、『にやにや笑う』を意味する『sneer』とするそうです。おもしろいのは、『glomp』という新和英大辞典に掲載されていない単語です。人に飛びついて抱きしめる『ぎゅむっ』『ヒシ』のような擬態語が使われたときに使うことができるそうです。

 みっつめは、日本語のドカン→ドッカーンのような強調形は『ker-』や『ka-』のような接頭辞で示すことがあるそうです。たとえば、『boom』(ドーン、ズーン) に対し、『ker-boom』(ドッカーン、ズドーン) のようなバリエーションをつくるそうです。

 日英翻訳における、擬音語・擬態語の扱いの難しさを垣間見ることができました。

 いっぽう、日本語と英語の類似点で印象に残っているのは、隠語表記です。『氏ね』などインターネット上で使われている隠語は、日本語でもいろいろあるようですが、英語では leet (speak) という、アルファベットを数字や記号に、数字をアルファベットや記号に置き換える表記があるようです。

 インターネットで調べてみたところ、leetspeak 情報を多く見つけることができました。leetspeak は、検索性を低めるため、つまり、自分たちの発言が広範囲に見られることがないよう、ハッカーなどが 1990 年代に使い始めたと言われています。ただ、同音異字を使えば、検索性が一気に落ちる日本語とは違って、leetspeak を使いこなすのは難しそうに感じられました。leetspeak に変換するための一覧表やアプリが数多く見つかったからです。

 相違点や類似点の発見以外にも、ニュアンスを伝えるのが難しいと感じる用語を再認識することもできました。たとえば、『あいつちょっと天然入ってるよね』などと使われる『天然』は、癒しの雰囲気というか、少なくとも見下したニュアンスはないように思います。『何が悲しくてこんな本を買っちゃったのやら』の『何が悲しくて』というのは、もちろん何かを悲しんでいるわけではないので、説明に窮する表現です。『まだ宿題を提出していない不届き者が約一名いるようだ』の『約一名』は、一名という数に対して『約』をつけて、何をどう和らげようとしているのか説明が難しく感じられます。

 読みものとしても、おもしろい辞典だと思います。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本語/文章) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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