2022年12月29日

「この言葉の語源を言えますか?」

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日本語倶楽部 編
河出書房新社 出版

 さまざまな言葉の由来が載っているのですが、わたしにとって身近な話題が印象に残りました。

 ひとつめは、通貨です。米国の通貨はドルで、通貨記号は $ です。S に線が引かれて、Dollar の記号になった理由は、米国が植民地だったことが関係しています。実は、S は、Spain の頭文字だそうです。また、神聖ローマ帝国が発行した通貨に『ダーレル銀貨』というものがあり、スペインでは『ドレラ』と呼ばれていました。それが米国に渡った際、『ダラー』、つまり『ドル』と呼ばれるようになったというのです。

 日本通貨のように、通貨単位の頭文字に線を引いて通貨記号とした一般的なケースとは異なる成り立ちです。

 同様に、ポンドの £ も Pound の頭文字を使っていません。こちらは、イギリスの通貨がポンドになる前、『ライブラ (Libra)』という通貨を使っていて、その頭文字がポンドの時代に移り変わっても、残ったそうです。

 ふたつめは、翻訳ミスとも受け取れる由来です。『富める者が天国に入るのは、ラクダが針の穴をくぐるより難しい』という西洋のことわざがあります。針の穴をくぐれないのは、ラクダに限ったことではないのに、なぜラクダなのでしょう。このことわざは、もともとシリア・メソポタミアの古代語アラム語のもので、『ラクダ』にあたる『gamla』は、『ラクダ』だけでなく『縄』の意味もあるそうです。糸よりもずっと太い『縄』のほうが、針の穴を通すイメージに近いことから、意味の取り違えが語源ではないかと言われているそうです。

 みっつめは、わたしが頻繁に食べる『赤福』です。語源は、『赤心慶福 (せきしんけいふく)』という言葉にあり、『悪しき心を五十鈴川に流してしまい、人の幸福を自分のことのように喜んだりする』という意味だそうです。赤福の表面の波形は、五十鈴川のせせらぎを、白い餅は川底の白石をあらわしています。昔は、伊勢神宮のすぐそばを流れる五十鈴川で身を清めてから、参拝したという話を聞いたことがありますが、赤福の由来が高尚な教えにあるとは知りませんでした。

 言葉の由来は、確かなことがわからないことも多いですが、それでもいろいろな説に触れるだけでも楽しめます。
posted by 作楽 at 20:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本語/文章) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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