2023年02月11日
「ひとりのときに」
高橋 茅香子 著
horo books 出版
この本の奥付の隣に『horo books は 100 部から 700 部発行の超スモールプレスです 売り切れ後は、増刷はしません』とありました。わたしがこれまで読んできた本とは、まったく違う発行方法のようです。流通経路も違うのか、カバーにはバーコードの印刷もありません。
ここには、2021 年の『98 字日記』(著者は、98 文字でまとめた日記を 2011 年から毎日 Web で公開しています) とエッセイ 5 編がまとめられています。98 文字で日記を書くのは『文章を書く上で自分に課す鍛錬』と説明されています。なぜ 98 文字なのかについては説明がありませんが、ここまで文が短いと、その文が生まれた状況などを想像する余地が大きく、共感など読者に生まれる感情が、より多様化するのではないかと思いました。
著者は、身分証を見せる機会があった折り、「98 字の方ですか」と、声をかけられたことがあるそうです。共感したり気づきを得たりする読者が存在することを知ることができるのは、ひとり鍛錬を続けているだけではあり得ないことで、素晴らしいことだと思います。
わたしがこの本で一番共感できたのは、次のことです。『タイトルを「ひとりのときに」としましたが、私は「ひとり」をとりわけ強調したいとは思いません。幼い頃からひとりでいることが好きではありましたけれど、ひとりが一番いいと人に薦めることはしません。ただ、ひとりでいる時の充足感があってこそ、他の人との触れ合いを大切にできると、いつも感じています』。
増刷してどれだけ利益を伸ばせるか腐心する出版もいいと思いますが、本に対する思いを実現するだけで増刷しない出版もあっていいと思いました。
この記事へのトラックバック
作家の方からコメントをいただくなんて、私が書いているブログでは最初で最後だと思います。どうもありがとうございます!
しかも、魔女の98文字をプレゼントしていただけるなんて光栄です。この98文字をお書きになったときの光景を想像したら、「言葉を紡いでいる」という表現が浮かびました。
先日コメントをお送りして、ふと気付いたのが配信時間。2月28日午後2時28分でした。もちろん、しようと思ってできることではなく、私も魔女になれるのではないかと期待しています。茅香子