
上野 誠 著
幻冬舎 出版
大和言葉は、柔らかい印象を与えるイメージがあり、わたしにも使える言葉がないかと思って、読みましたが、使ってみたいと思った言葉より、誤った使い方をしたことがあったかもしれないと不安を感じた言葉のほうが多くありました。
使ってみたいと思ったのは、『ややもすれば』で、例文は、『朝寝坊をしないように、みんな気をつけていると思いますが、一時間目は八時半からなので、ややもすれば遅刻してしまうことになります。ですから、前日は夜更かしなどしては、いけませんよ』とあります。ほんの少しのことで、そうなってしまうという懸念の伝え方は、相手を咎めているようには聞こえない気がしました。
正しく理解できていたか自信をなくした言葉は、『さじを投げる』、『たしなめる』、『下にもおかぬ』、『舌を巻く』です。
『さじを投げる』は、うまくいく見込みがない場合に、あきらめて手を引くことですが、この本によれば、八方手を尽くした時のみ、使えるそうです。さまざまな手を尽くし、それでもうまくいかない場合に限って、『さじを投げる』といっていいようです。
『たしなめる』は、厳しく怒るのではなく、優しく指導することなので、わたしもこれまで受け身で使ってきたことがある言葉です。もっぱら、目上の者が目下の者に注意を与えるときに使う表現だそうです。わたしが、後輩からたしなめられたと言ったとき、周囲はどう思っていたのか、不安になりました。
『下にもおかぬ』の場合、単に好待遇をあらわすだけではなく、本来それほどの厚遇を受けるはずのない者が、厚遇を受ける時に限って使用できるそうです。これまで、厚遇に値する人に対してこの言葉を使うという失礼な振る舞いに及んだことがなかったことを祈りたい気分です。
『舌を巻く』は、相手の力量の大きさ、戦略のみごとさを知って驚いた時に使えますが、多くの場合、やや見下していた者の実力が大きいと感じたときに使うそうです。逆にいうと、実力が予想どおりなら、使えません。これも、相手の実力を過小評価していたと思われる表現なので、注意を要します。
使える場面が限定されていることを知らず、失礼なことを言わないよう気をつけたいと思います。