
ヴィオレッタ・ウドヴィク 著
インターブックス 出版
ウクライナがロシアに侵攻され、毎日のようにウクライナのニュースを見聞きする状況でなければ、この本に興味をもつこともなかったと思います。ただ、実際に読んでみると、120 年にわたる、日本とウクライナの交流が、よくまとめられているという印象を受けました。浅くとも広く記録された有益な内容だと思ういっぽう、退屈にも感じます。多岐にわたって紹介されているものの、すべてに関心をもてるわけではないためです。
わたしが関心をもったのは、文学です。新潮社クレスト・ブックスから出版されている「ペンギンの憂鬱」(2004 年) や「大統領の最後の恋」(2006 年) などの翻訳作品を読んでみたいと思いました。
しかし、何よりも一番印象に残ったのは、原発事故にかかわる両国の関係です。1986 年 4 月、チェルノブイリ原発 4 号炉が爆発しました。その年の 10 月、読売新聞社と日本対外文化協会は、広島と長崎の被爆者の治療、調査などに実績をもつ 4 人の放射線医学者を『医学協力団』として派遣したそうです。
それから 25 年経ち、東日本大震災のおり、福島第一原発事故が起こり、日本からウクライナへの支援は相互協力へと発展し、ウクライナの専門家が日本側と経験を共有するようになったそうです。
地震や津波が日常的に起こる日本において、『安全』を第一に考えれば、電力の一部を原発に依存するのは誤りだったとすれば、それは、セーフティーカルチャーが欠落していたチェルノブイリ原発事故と同じところに原因があると考えられるのではないでしょうか。
同じ過ちを犯してしまった、ウクライナも日本も、これからどのように廃炉していくのかといった知見を共有しながら、原発のリスクやコスト、付随するさまざまな情報を発信してほしいと思います。