2024年04月15日
「とっぴんぱらりの風太郎」
万城目 学 著
文藝春秋 出版
久々に万城目作品を読みました。主人公は伊賀の忍びのひとり、名は風太郎で『ぷうたろう』と読みます。厳しい訓練に耐え、ようやく一人前というときに追放されてしまい、文字どおり風太郎暮らしなってしまいます。
しばらくして風太郎は、ふたつの不思議なできごとに巻き込まれます。ひとつは、因心居士 (いんしんこじ) という得体の知れない者にいいように操られる羽目に陥ったこと、もうひとつは、謎に包まれた高貴な方が祇園会に出かける際の護衛を忍び仲間を通して請け負ったことです。
不思議な力をもつ、正体のわからない存在が登場するあたり、万城目作品らしいファンタジー要素が入っています。同時に大坂冬の陣・夏の陣が時代背景になっていて、歴史小説の要素も入っています。さらに、当時としては珍しかったであろう異国の話題も盛り込まれ、ちょっとしたユーモアも散りばめられ、てんこ盛りの長編ですが、不思議と長さが気になりませんでした。
読み進めるにつれ、少しずつ不可解なことが解き明かされていくため、つい先を急ぎたくなりました。因心居士の狙いはなんなのか、高貴な方は、どこの誰なのか、なぜ狙われたのか、忍び仲間それぞれの抱える事情はなんなのか。
そして何より、平和で安定した世に移っていくなか、不要となっていく忍びに残されたそれぞれの道を思うとき、現代のさまざまな消えゆく職業を思わずにいられませんし、不可能としか思えない約束を交わした風太郎が、命を賭してそれを果たそうとする姿から目を逸らすこともできません。
読んでいるあいだ、時間を忘れてしまうエンターテイメント作品だと思います。
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