2024年05月14日
「これってシロ? クロ? 身近な法律の 135 の事例集」
高橋 裕次郎/村尾 遼平 著
セルバ出版 出版
本書は、クラウドファンディングで調達された資金で出版されたそうです。出版のかたちも多様化しているのかもしれません。ただ、商業的に厳しいと判断された可能性が感じられる内容でした。
事例はいずれも、『概要』と『弁護士 (高橋氏) の見解』と『村尾の見解』で構成されています。
135 もの事例が 200 ページほどに詰め込まれているので、事例の背景を知るだけのじゅうぶんな情報が概要部分に提示されていない事例がかなり見受けられました。
また、弁護士によるコメントも刑法上の犯罪が成立するかしないかだけで、説明らしい説明がありません。たとえば、フォルクスワーゲン社、日野自動車、三菱自動車が性能データを偽装したケースでは、『3 社の不正はいずれも、刑事的に犯罪が成立するものではありません。しかしながら、社会的な制裁は当然に受けます』とだけあります。詐欺罪が成立しないということだと思いますが、一般消費者を欺きながら、なぜ詐欺罪が成立しないのか、また、不当景品類及び不当表示防止法などで課徴金が課せられたりしないものだろうかといろいろ気になりましたが何も解説がなく、残念に思いました。
また、事例のなかには『いつ』という大切な情報が欠けていて、『このケースが実際に起きたのは飲酒運転が今よりおおらかに許された時代の話』とコメントされている例もあります。法律を扱う以上、どの時点のどういった法律に照らし、犯罪となるのかならないのか論じてほしかったと思います。
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