以下の短編が収められています。
ー悪い妻
ー武蔵野線
ーみなしご
ー残念
ーオールドボーイズ
ーもっと悪い妻
帯のコピーは、本が売れるように書かれるため、読み終えたあとに目にすると、本の実際の内容とのギャップに驚くことがありますが、この本の推薦文は、簡潔かつ的確に思えました。
不幸な『悪い妻』は許されるが、満たされた『もっと悪い妻』は断罪される。『妻』という呪いと、『妻』を理想化する社会へのしたたかなカウンター。
ここで断罪された妻は、もし妻ではなく夫であれば、甲斐性があると言われ、大目に見てもらえたことでしょう。「もっと悪い妻」では、そういった社会の空気が見事に描かれています。
また、「武蔵野線」では、すべてを見透かされていながら、それを離婚されたあとも気づけずにいる男が、辛いときに元妻を頼る滑稽な姿がうまく描かれています。しかも元夫が、おとなになれずに落ち込んでいる自分を『男の絶望』を味わっていると信じているあたりも社会が許容してきた男の地位を的確に指摘している気がします。
時代が変化していく方向を心地よく感じる女と昔にしがみつきたくて仕方のない男の対比を感じた作品でした。