2024年11月01日

「新版 科学がつきとめた『運のいい人』」

20241101「新版 科学がつきとめた『運のいい人』」.png

中野 信子 著
サンマーク出版 出版

 著者の脳科学の知見をもとに、どうすれば運がよくなるか示されています。すべて納得できたわけではありませんが、腑に落ちたものがいくつかありました。

 ひとつは、『割れ窓理論』です。これまで、治安に関係する話題でなんども耳にした理論です。軽微な犯罪がやがて凶悪な犯罪を生み出すという考えで、凶悪な犯罪だけを取り締まろうとするのではなく、軽微な犯罪を一掃することで、凶悪な犯罪も起こりにくくなることが知られています。この理論は、ひとにも当てはまると著者は考えています。自らを大切にしているひとを、粗末に扱うのは周囲のひとも抵抗を覚えるというわけです。ごみひとつ落ちていない道にごみを捨てるときの感覚とごみだらけの道にごみを捨てるときの感覚に違いがあるのと同じです。つまり、ひとから大切に扱われたいと思えば、まず自らが自身を好きになり、大切にすべきというものです。

 もうひとつは、『ランダムウォークモデル』です。何万回あるいは何十万回といったレベルで平均すれば、コイントスの表と裏は半々で出現することが期待されますが、最初の数十回あるいは数百回は、表裏どちらかに偏ることも多々あります。ここに、実現したい夢があったとします。その道のりにおいて、プラス方向、つまり夢に近づくできごとと反対のマイナス方向のできごとは、コインの表裏と同じで、マイナスばかりが続くこともありえます。著者は、運がいいひとは、たとえマイナスばかりが続いてもゲームからおりず、最小限の損失になるよう努力して次のチャンスに備えているといいます。つまり、ランダムウォークを想定し、長期的視点をもって、自分が『これぞ』と思っているゲームからはけっして自らおりない、だから夢を実現できるのだというのです。たしかに、粘り強いひとのほうが運をひきつけるのかもしれません。

 実験結果など客観的な数値をもとに理論を証明しているわけではないので、真実か疑ってしまいたくなる考えもありますが、脳の癖を知っている著者の意見には一定の説得力がありました。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(その他) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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