
もんじろう運営委員会 著
総合法令出版 出版
『もんじろう』と呼ばれるサイトでは、標準的な日本語を、大阪弁・津軽弁といった方言や武士語に変換してくれます。この本は、その『もんじろう』から武士語だけを抜粋したものです。
地理的に離れた場所のひとたちとコミュニケーションをとることはあっても、時間的に遠い存在である武士のことばを理解したり使ったりする必要に迫られないだけに、遊び心が刺激され、頭の体操にもなりました。ななめ読みでも、ちょっとした気づきが得られるかもしれません。
たとえば、武士が生きた時代は、移動するには、歩くしかありませんでした。例外は、経済的に恵まれたひとたちが坐ったまま移動できる駕籠です。
現代の『車』も『タクシー』も武士語にすると駕籠になるのは、想像がつきますが、現代の『地下鉄』を『地中長駕籠 (ちちゅうながかご)』と言い換えているのは、苦し紛れといった感があります。ただ、武士が生きた時代には地下鉄など影も形もなかったので、仕方ありません。江戸時代が終わった 1867 年から地下鉄が開通した 1927 年まで 1 世紀も経っていないことを考えると、武士の時代が遠いようにも近いようにも感じられます。
武士の時代を意外に近く感じられたのは、『改易』や『口入れ』です。『改易』は、広辞苑では「官職をやめさせて他の人に代わらせること」とか、「所領や家禄・屋敷を没収すること。江戸時代の刑では蟄居(ちっきょ)より重く、切腹より軽い」と説明されています。現代語の『リストラ』の言い換えに、この『改易』が選ばれています。いっぽう、『口入れ』は、広辞苑で 3 番目の意味として「奉公人などの世話をすること」とあり、現代語の『人材派遣』に該当します。『人材派遣』は、バブル経済崩壊後に増えた印象がありますが、形態としては、特別新しいわけではないのだと思いいたりました。
ことば遊びとしての武士語を考案したひとに興味がわきました。