
小宮 一慶 著
日経BP 日本経済新聞出版 出版
わたしにとっては、学ぶ点が多い本でした。まず、巻末に『主な経済指標一覧』が掲載されていて、とても便利です。次に、長年日経電子版を購読しながら、便利な『経済指標ダッシュボード』を知らずにいたので、その存在を知るきっかけになりました。最後に、著者の説明がわかりやすく、世の中の流れを推測できる見方を学ぶことができました。


上記の『主な経済指標一覧』は、全部で 58 です。日本と米国の指標が多いのは当然ですが、意外だったのは、中国の指標が少なかったことです。内訳は、日本 41、米国 14、ヨーロッパ 2、中国 1 です。中国で唯一選ばれたのは、中国・国家統計局発表の消費者物価指数です。
著者の解説で印象深かった点は、4 点あります。ひとつは、なんといっても、マネタリーベースです。『異次元緩和』といわれながら、どのくらい異次元なのか、わたしは全然理解できていませんでした。ここには、『日銀が大量に国債を購入する「黒田バズーカ」は 3 度実施され、マネタリーベースは 10 年で約 5 倍の水準に達しました。日銀当座預金残高は、異次元緩和スタート当時は約 60 兆円でしたが、約 570 兆円 (2024 年 4 月 25 日時点) まで増加。マネタリーベースは約 700 兆円 (同) まで膨らみました。このような異常な状態になるまで、政府はまさに日銀を "使い切った" のです』と書かれてあります。
次は、日本の国力の低下に関する著者の解説です。『有事の円買い』といわれた円も、いまやその立場を失ったようです。『規模は異なりますが、2009 年 10 月に起こったギリシャ危機では 1 ドル=80 円前後まで円高が進みました。ところが、シリコンバレーバンクに端を発した米国の金融危機の兆しが見えたときは、円高は 1 ドル=130 円台までしか進みませんでした。これが、2009 年から 2023 年の 14 年間における日本経済の実力の低下だと私は懸念しています。円安の理由は、ひとえに日本の国力が落ちた結果だといえるでしょう』と、書かれてあります。この先、まだまだ円安は進みそうです。
3 番目は、貯蓄率です。米国の貯蓄率は、新型コロナのパンデミック時は、30% 前後と高い数字を記録しましたが、ポストコロナといわれる時期になると、3%〜4% で推移しています。わたしは、もう少し高いと思っていたので、意外でしたが、驚いたのは日本の貯蓄率です。米国が 30% 前後だった時期でも 10% 前後で、ポストコロナでは、0% 前後です。理由は、貯蓄を取り崩して暮らしている高齢者の割合が増え、勤労世帯の貯蓄と相殺されて、0% 前後になるようです。
最後は、景気の先行きを知りたいときは、不要不急の消費を見るべきだという助言です。具体的には、『旅行取扱状況』や『全国百貨店売上高』などです。言われてみるとそのとおりなのですが、先行きに不安を感じると、旅行や非日常的な支出がまず減らされます。どういったデータをどう見ればいいのか、参考になりました。