2025年07月24日

「60 歳からの知っておくべき経済学」

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橋 洋一 著
扶桑社 出版

 共感できましたし、難しいことがわかりやすく説明されているとも思いました。前者については、たとえば、『持ち家は賃貸よりもリスクが高いから』、土地などの『資産もないのに、なぜわざわざ高いお金を出してまで家をもとうとするのか』と、著者が問うている点などに頷いてしまいました。また、官僚が国民の利益のためではなく自らの仕事を大きく見せるために働いていると感じているあたりも、頷けました。

 たとえば、消費が伸びないとき、減税すれば経済効果が期待できると思われても、滅多に減税されません。その理由は、減税よりも、手間がかかって政策コストの嵩む補助金のほうが財務省の好みに合うからだと著者はいいます。『補助金は税を集めて配るため、官僚、とりわけ財務官僚の存在感が大きくなる』いっぽう、『減税は税を集めないため、官僚からすると中抜きされるかたちになる』というわけです。著者は、減税と補助金の割合につき、『先進各国での各種政策における補助金と減税の比率を調べてみた』そうで、その結果、日本以外の先進国の補助金割合は 5 割以下で、日本は 8 割だったと明かしています。

 著者のわかりやすい説明のなかで印象に残っているのは、マンデル=フレミングモデルです。これは、財政政策だけでは、経済効果は望めないと証明したものです。

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 縦軸が金利、横軸が GDP になっている上のチャートに出てくる「MP 曲線」の MP は「金融政策 (Monetary Policy)」で、経済が過熱するとインフレが起こり、その抑制のために金利が上がるために右上がりの線になっています。「BP 曲線」の BP は、「国際収支統計 (Balance of Payments)」で、国際収支が均衡している状態の国民所得と利子率の組み合わせを示します。世界の金利に国内の金利が収束するため、ほぼ水平になります。「IS 曲線」の IS は「投資 (Investiment) と貯蓄 (Saving)」で、金利が高いほど投資が減って GDP が縮小するため、右下がりの線になっています。これら 3 つの線が交わる点の下がそのときの GDP、左が金利になります。(1) 財政政策のみ実施した場合、(2) 金融政策のみ実施した場合、(3) 両方実施した場合が説明されていました。

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 財政政策を実施すると、投資が増えた結果、IS 曲線が少し右にずれ、MP 曲線との交点が右上の@に移動します。すると、GDP が上昇すると同時に金利も上昇します。金利の上昇は、円高を招き、輸出産業が影響を受け、投資が減少して、IS 曲線が左にずれ、Aまで戻ってしまいます。つまり、財政政策だけでは、GDP は増えません。

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 次に金融政策のみ実施した場合、金利が下げられて MP 曲線が右にずれ、交点が@に移動後、投資が増えて IS 曲線が右にずれるため、下げた金利が上がってしまい、交点がAまで動きますが、GDP の上昇は残ります。

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 金融政策と財政政策を組み合わせて実施した場合、まず金融政策を実施するので、上記同様、交点がAまで動きます。その後、財政政策も実施されると、投資が増えて IS 曲線が右にずれて交点がBまで動きます。この図の例では、さらにそこで金融政策を実施して金利を下げ、さらに MP 曲線が右にずれ、交点がCまで移動することになります。

 たとえば、金利が上昇すると投資の抑制につながるなどの一般論と、この図さえあれば、経済効果に対する、金融政策と財政政策の影響度合いが理解できます。この本のタイトル、60 歳以上という年齢にかかわらず、すべての国民が知っておくべき知識だと思います。なぜ、このようなタイトルになっているかわかりませんが、良書だと思います。
posted by 作楽 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(経済・金融・会計) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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