2007年09月25日

「ラッシュライフ」

20070925[RushLife].jpg

伊坂 幸太郎 著
新潮社 出版

 去年から今年にかけて、東京渋谷でエッシャー展がありました。見に行きたいと思っていたのですが、年末年始の忙しさに紛れて行きそびれてしまいました。

 そのエッシャーの絵に、文庫本になったこの小説の中で出会うとは思っていませんでした。中に庭がある四角い建物の屋上部分が階段になっていて、その階段はどこまでもどこまでも同じ向きに歩き続けるようになっている騙し絵です。上へ上へ向かっている兵隊はずっと上に向かって歩き続けることができますし、下へ下へ向かっている兵隊もまた同じ。そんなことあり得ないのに、そう見えてしまう。1周したら、また振り出しに戻ってしまうという、おかしな、でもよくできた騙し絵だと思います。

 この小説は、群集劇のスタイルになっています。日本一の画廊の経営者とそこで契約した新進女性画家。空き巣泥棒とその同級生。ある男を神と崇める青年とその青年を殺人者に仕立て上げようとする男。リストラされ、ことごとく採用試験に落ち続けながら、老犬を拾ってしまう男。サッカー選手と不倫し、彼の妻を殺そうと計画する女性カウンセラー。

 それぞれの人生が別々に見えて、実はつながりを持っています。それがエッシャーの絵のようにぐるぐる繋がっているイメージと重なります。

 また、それぞれの登場人物のストーリーがかわるがわる繰り広げられるのですが、それらは時系列に並んでいるわけではありません。あとで起こったできごとがストーリー中では先に出てきて、あとでその理由がはっきりするということも起こります。どこが初めでどこが終りなのか、あやふやな感じがまたエッシャーの絵に重なってきます。

 ありえない話しばかりですが、先が気になり、一気読みしてしまう作品です。読んでいる途中は、先が知りたい一心なのですが、読み終わると、伏線が多く高度に計算された話しだったと初めて気づきました。

 ただ、仕組みがわかってしまえば、また読みたいとは思いませんでした。そこが、前回読んだ「死神の精度」と違います。たぶん、私にとって「ラッシュライフ」には感情移入できる登場人物がいなくて、「死神の精度」には居た、ということではないかと思います。
posted by 作楽 at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(日本の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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