![20080305[TokyoKitanshu].jpg](https://witch-sara.up.seesaa.net/image/200803055BTokyoKitanshu5D-thumbnail2.jpg)
村上 春樹 著
新潮社 出版
次の5編から成る短編集です。
−偶然の旅人
−ハナレイ・ベイ
−どこであれそれが見つかりそうな場所で
−日々移動する腎臓のかたちをした石
−品川猿
「東京奇譚集」というタイトルがあるので、東京という場所をキーに、短編それぞれが緩くつながっているのかと想像していましたが、単に「東京」という文字をタイトルに入れたかっただけのようです。
それぞれ、ちょっと(かなり?)奇妙な話なのですが、私が一番気に入ったのは、「品川猿」。地下に潜んで、ちょっと変わったものを盗んでしまう迷惑な猿なのですが、盗むものも妙ならば、盗む動機も妙です。そして、その周りの登場人物も妙な感じです。たとえば、どこにでも居そうな、よく話す年配女性のカウンセラーが、実は妙に鋭かったり、その夫の区役所勤務の公務員に行動力があったり、意外性が楽しめます。その一方で、公務員の夫とその部下との会話がいかにも公務員らしく皮肉を込めて書かれている部分は笑えます。
そうかと思えば、主人公を通して、感情とはどういうものか、その感情と向き合うことの大切さを自然と考えてしまう不思議なはなしです。
ストーリーとは離れてしまいますが、村上春樹氏の文は、やはり個性的という表現が似合う気がして仕方がありません。翻訳調とおっしゃる方もいますが、翻訳をされていることと関係あるのでしょうか。ことばの選び方がちょっとおもしろいと思えるのです。たとえば、誰かが話しているときの漢語の使い方とか、形容詞とそれに形容される名詞の組み合わせとか。
ストーリーがわかったあとも、そんなおもしろい表現を探したりしながら、二度楽しめる本のような気がします。
有名過ぎる作家なので、今まであまり読みませんでしたが、また機会があれば読んでみようかと思います。
コメント、どうもありがとうございます。
文庫、全然気づきませんでした。しかも、去年の出版なのに。。。狭い狭い私の部屋には文庫が合っていたかもしれません(>_<)
今も村上春樹氏の本、読んでます。「やがて哀しき外国語」。こちらは、文庫を買いました。