2008年04月01日

「情事の終り」

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Graham Greene 著
田中 西二郎 訳
新潮社 出版

 タイトルには「情事」の終りとあります。その情事と恋の違いについて、書かれた部分がありました。
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わたしはふたりの恋も山がみえたことを自覚するようになった。恋は、始めと終りとのある情事に変化していたのである。それの始まった瞬間は、わたしにははっきり指摘できたし、とうとう或る日、それが終る時をはっきり指摘できるときが来ることもわたしは知った。
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 そして、この物語は、情事が終ってしまってから、終った当時のことを男が紐解くかたちで、過去に遡っていきます。男が知らなかった女の変化が少しずつ見えてきます。その構成には、ひきこまれてしまいました。

 構成だけではなく、テーマにも惹かれます。情事とは、恋とは、愛とは、結婚とは、希望とは、何か。そこに、カトリックという信仰が絡み、より複雑な模様になっていきます。さらに、ひとりの女を共有したともいえる男たちのとった信じられないような行動や、不思議なできごとが、女性の魅力の強さを物語っているように思えます。

 日本語版の最初は、昭和三十四年に出版されています。戦争という時代背景や、ことば遣いから、時代を感じるものの、古いという印象は不思議とありません。読み継がれていく本なのだと思います。
posted by 作楽 at 00:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 和書(海外の小説) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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