2008年05月21日

「On What Grounds (Coffeehouse Mysteries)」

20080521[OnWhatGrounds].jpg

Cleo Coyle 著
Prime Crime 出版

 Coffeehouse Mysteriesのシリーズの第1巻です。いつも感じるのですが、シリーズの第1巻は大変です。必要となる背景を最初に説明しないと先へは進めないのですから。人気の度合いによってか、シリーズの途中で、前の設定を覆すようなとんでもない変更がでてくることもありますが、基本的には、第1巻で説明されたことがベースになって、シリーズは進行するのですから、仕方がないといえば、仕方がないのですが。

 このシリーズも例外ではありません。主人公のClare Cosiは、約1世紀という長い歴史を持つコーヒーショップVillage BlendをMadame Dreyfus Allegro Dubois(いつもは、単にMadameと呼ばれています)から任されているのですが、その経緯も説明されていますし、Clareの前のマネージャMoffat Flasteが、いかにいい加減だったかも説明されています。その上、とても不自然に見えることですが、別れた夫であるMatteo Allegroと同居している状況の説明もあります。

 本題に入る前にずいぶん色々と説明しないといけないな、と他人事ながらため息が出ますが、読むほうも、なんとなく肝心な部分が棚上げになって、テンポよく読めない気がします。

 肝心な部分、つまり本題というのは、AnabelleというClareの右腕としてVillage Blendで働くマネージャがある日、店の階段から転落した状態で発見され、事故が事件かはっきりしません。でも、Clareは事件だと直感します。事件なら、犯人がいるはず。それに動機は何か。

 一方、警察側のQuinn警部補は、特に事件と断定する要素がないことから、事故ではないかというのですが、Clareはこれに対して、勘で対抗するのみ。

 そうこうするうちに、以前Moffatが店を任されていた間に、事故保険が切れていることが発覚します。つまり、Anabelleの事故を補償できる保険がないことがわかります。事故ではなく、事件のほうが店にとってもありがたい、という状況になり、Clareと別れた夫、Matteoが協力して、犯人探しに乗り出します。というのは、店のオーナーであるMadameは、Matteoの母親なので、彼には協力する理由がいろいろあるわけです。

 なんともややこしい人間関係というか背景を抱えながらも、事件(事故)はなんともシンプル。階段から落ちて死亡。なんとなく、事件を解いているというより、複雑な人間模様を描いているという印象を拭えないので、ミステリを読んでいるという満足感は得られないのですが、このシリーズ、ちょっと気になります。というのは、ClareとQuinn警部補が今後どういう関係になっていくのか、とか、ClareはMatteoと寄りを戻すのか、とか、ロマンスの部分も見え隠れするのです。それだけではありません。ClareとMatteoの娘Joyは、この巻でボーイフレンドを連れて登場していますし、Madameは腫瘍専門医との交際を告白しています。私としては、ClareとQuinn警部補に素敵な関係が生まれればいいな、などと感情移入してしまっています。

 次の巻からはテンポよく進んでくれることを期待しつつ、恋の行方が気になって、次の巻も読んでしまうような気がします。
posted by 作楽 at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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