2025年10月28日

「「悩まない」は 9 割習慣」

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本山 ウリ 著
セルバ出版 出版

 わたしは、時間の無駄とわかっていながら、くよくよと考えてしまうたちですが、考え方を変えるだけでは、悩みのループから抜け出せないそうです。この本によると、『自分を変えるための手段として、「思考・心・体」の 3 つの軸で習慣を変え』なければならないそうです。

 この本を読んで、「思考」、「心」、「体」それぞれに対して、考え方が少し変わりました。たとえば「思考」では、くよくよと思い悩む自身を愚かだと思っていましたが、この本の『人間の脳は未だに原始時代を生きている』というコラムを読んで、「くよくよ」も自然な反応かもしれないと思えるようになりました。約 20 万年前から人間の脳の構造は変わっていないそうです。約 1 万年前に農業が始まり、約 200 年前に産業革命が起こり、約 30 年前にインターネットが普及しだしました。わたしたちの生活は短期間で激変したのに、脳は同じままです。昔は生き残るだけでも大変なことでした。ちょっとした異変に敏感だったり、協調的だったほうが生き残りやすかったことでしょう。そのため、いまとなっては気にする必要もないことを、気にしてしまうのは仕方がないのかもしれません。

「体」で印象に残っているのは呼吸です。くよくよすると眠れなくなるのが常ですが、著者は、「天然の睡眠薬」を勧めています。『4 秒息を吸った後に 7 秒間息を止めてから 8 秒息を吐く』呼吸です。慣れるまでは、あまり秒数にこだわり過ぎず、深い呼吸でリラックスすることを優先させるといいようです。そう考えると、体を軸とする習慣も有効かもしれません。

「心」の軸については、ひとつの気づきがありました。『生まれ持った性質やこれまで過ごした環境から、「我慢が当たり前」になっていることがあります』と、著者は書いています。それを読んでも何も思いませんでしたが、そのあと『特に「このくらい平気」という言葉が出たら、当たり前に我慢しているサインです』という文が続き、自身のことだと気づけました。

 著者は、自分に我慢を強いるのをやめて、「セルフコンパッション」を勧めています。具体的には、@嫌な気持ちになったことに気づく、A「よく頑張ったね」と優しい声をかける、Bどうすれば少しでも楽になれるかを考える、C自分にとって本当に助けになることをする、というステップを説明しています。

 ただ単に「くよくよ」するのを止めようと考えるのではなく、体を動かしたり、自らを褒めたり、ものの見方や習慣を変えることも、悩みのループから脱出するのには有効かもしれません。
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2025年07月08日

「すぐやる脳」

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菅原 道仁 著
サンマーク出版 出版

 すべきことに取り掛かれない自分をずっと不甲斐なく思ってきましたが、万人の脳がそうできているのだと、この本で学べました。人間を含む生物にとって、『「エネルギーを使う」という状態は、最も避けたい状態』なのです。そのため、『脳が「じっとしていよう」「エネルギーを節約しよう」というモードに自動的に』戻ってしまうようです。

 また、日本人の脳は、遺伝的に挑戦を避けやすくできているそうです。「幸せホルモン」という別名をもつホルモン、セロトニンが『十分に分泌されていると、安心感を覚えたり、幸せを感じたり、やる気をうまく出したりすることができ』、『新しいことを恐れず、大胆な挑戦をしやすくなります』。この『セロトニンの量の調節に関わるのが、「セロトニントランスポーター」(serotonin transporter) という遺伝子です』。「不安遺伝子」とも呼ばれるこの遺伝子の数が多いと『セロトニンを多く使い回せるため、安心感を覚えやすくなります』。残念なことに、『この「セロトニントランスポーターの数が少ない人」の割合が、世界でいちばん多い』のは、日本人だそうです。いろんなことに尻込みしてしまうわたしの性分も日本人らしい遺伝子を受け継いでいるせいかもしれません。

 だからといって、やる気を出せないわけではありません。やる気を出すための著者の助言のなかで、わたしが取り入れたいと思う方法がふたつありました。ひとつは、「ミラーニューロン」(mirror neuron) を活用する方法です。『ミラーニューロンとは、目にした相手の言動を、あたかも「自分自身の言動」であるかのように「共鳴してしまう」運動神経細胞』です。「ものまね細胞」と称されることもあるそうです。この細胞のおかげで、『周囲の人の行動に知らず知らずのうちに影響を受けて行動する、ということ』が研究で明らかになっているそうです。こうありたいと憧れる人物のそばに身をおけば、その人物のようになれる可能性が高まるのです。たしかに、自らの力だけに頼っても、挫折を繰り返してしまう気がします。環境の力も借り、違う自分になればいいのです。

 もうひとつは、「続ける」ためのコツです。三日坊主にならないためには、『「キリの悪いところ」でやめる方法』が有効だそうです。『あえて中途半端なところで終わらせる』と『「続きをやりたい」という欲求が強くなり、翌日にそれをできたことが脳への報酬になってドーパミンを放出』。結果、幸福感を得られるというわけです。こんなに簡単な方法で継続できるのなら、試してみる価値はあります。

 脳科学の本は、いつ読んでも興味深く、自分の脳すら知らずにここまできたことを痛感します。
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2025年03月31日

「移動する人はうまくいく」

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長倉 顕太 著
すばる舎 出版

 自己啓発書の場合、著者自身が成功した方法は万人に役立つと考えて、書かれていることが多々あります。この本も、相関関係があるだけなのに因果関係があると誤解しているように見受けられる点があったり、全体的に根拠が乏しく感じられました。ただ、感覚的にそうかもしれないと納得できた点もありました。行動を変えたいと思いながら変えられないひとに対し、著者が意志の力で変えるのは難しくとも、環境を変えると感情が動き、その結果として行動が変容すると説いている点です。

 ひとは『安定』を望む傾向があり、毎日の繰り返しを退屈と感じながら、そこから脱することができません。だから、人生を変えたいと思えば、旅に出るとか、多拠点生活をするとか、意図的に行動範囲を変えると、接するひとや情報も変わり、自ら考えるようになり、自然と行動に移せるようになるという意見です。さらに、タイトルにある『うまくいく』の意味が、収入を増やすでも、恋愛を成就するでも、昇進するでもなく、行動を変えることにあり、具体的な目標を設定していない点で、結果を出せそうな気がしました。

 そもそも、著者にとって、目標設定自体意味のないことのようです。動き続けていれば、目指すものも変わり続けます。この本も、途中で話題があちらに飛びこちらに飛びで、テーマに沿っているようでいて、そうでもありません。どうやら、著者が目指すのは、特定の目標ではないようです。『いろんなことができるようになるというより、いろんなことに対応できる人間になっておく必要がある』と書いているからです。AI の発展が今度どういった速度で進んでいくのかわからず、人間の寿命が伸びているいま、そのとおりだと思います。さまざまな経験を積み、人脈を増やし、自らの対応力をあげるために動き続けるというのは、理にかなっているかもしれません。

 問題は、潜在的に対応力を有するひとが、その能力を目覚めさせるために移動するのは効果的かもしれませんが、移動すれば、あらゆるひとに対応力が備わるかについては、根拠が乏しい印象を受けたことです。
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2025年03月28日

「人は、なぜさみしさに苦しむのか?」

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中野 信子 著
アスコム 出版

 さみしさに限らず、感情には個人差があります。わたしは、さみしさを感じることが比較的少ないと自分では思っていますが、新型コロナウィルスが流行した折りは、さみしさ、不安、心細さといった負の感情を意識せざるを得ませんでした。それ以降、『感情』というものを理解したいと思うようになりました。

 この本で目指しているのは、さみしさが生じる仕組みを理解して上手にさみしさと付き合い、人生をより豊かに過ごせるようになることです。確かに、さみしく感じたからといって、その感情に浸っているばかりでは、よい方向に進めません。

 著者によれば、さみしさは、人間が生き延びるための仕組みだそうです。現代は、成人すればひとりでも生き延びられる環境にあると言えますが、人類の歴史において、それはつい最近実現した状況です。それまでは単独よりも集団でいるほうが生存の可能性が極めて高く、共同体や組織などの社会的集団をつくることで人類は生き延びてきました。そのため、危険や危機を予測する防御反応として、さみしいという感情が生じるのではないかというのです。

 そのほか、さみしいという感情の特徴として、痛みなどとは違って個人差が非常に大きいと説明されています。つまり、第三者のさみしさを想像するのは難しく、本人にしか、そのさみしさをうまく扱えないようです。また、1 歳半までの時期に、スキンシップを多くとるなど『愛情ホルモン』であるオキシトシンの分泌が多くなれば、愛着関係を築けますが、その逆だと、誰かがそばにいることを好まないようになります。さらに、孤独が寿命に与える影響力は、タバコやお酒による害や、太り過ぎ、運動不足という生活習慣に起因する害よりも大きいという研究結果もあるそうです。

 こういった、さみしさの特徴を理解し、さみしくなるのはひととして健全な反応だと捉え、それでもいい人生を生きていけるように考えることを著者は勧めています。さみしさを克服しようとせず、さみしいときは話を聞いてくれるひとに騙されやすくなっていることなどを頭の片隅で警戒しつつ、自分が本当に必要としているのは、どんなつながりかを認識することが大切だというのです。

 さみしいという感情に振り回されず、適度な距離感でひととのつながりを築きつつ、機嫌よく日々を過ごす参考になる本だと思います。
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2025年02月18日

「思考の穴」

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アン・ウーキョン (Woo-kyoung Ahn) 著
花塚 恵 訳
ダイヤモンド社 出版

 イェール大学の心理学教授が書いた本です。本教授の講義『シンキング (Thinking)』に登録した学生の数は、2019 年だけで 450 人を上回ったそうです。その人気は、『日常においてさまざまな決断を下すときの判断力の向上』に役立つ内容にあり、その評判から書籍化に至ったようです。

 この本のテーマ、認知心理学が長年研究されてきて、ひとは非合理的な判断をしてしまう心理傾向があることが広範囲で明らかになってきました。わたしたちは、認知において、思い込みや直観などに左右されてしまう傾向があり、その誤った判断は『認知バイアス』と呼ばれています。『バイアス』とは、あるがままを見ることができないことを指しています。

 著者によれば、認知バイアスのなかでも、『確証バイアス』 (自分が信じているものの裏付けを得ようとする傾向のこと) が最悪だそうです。しかも、この本を読めば、誰もが確証バイアスを含むあらゆるバイアスにとらわれていると認めざるを得なくなります。ひとは合理的な判断ができないようになっていると思うと、暗い気持ちになりますが、著者はそのメリットにも触れています。それは、脳のパワーの節約、『認知能力の倹約』です。この世にある、あらゆる可能性を模索し続けることは、途方もないエネルギーを要します。だから、ひとは、『意思決定をする際は、ある程度満足したところで、それ以上の探求をやめる』わけです。この行為は、『満足する (サティスファイ)』と『十分である (サファイス)』を組み合わせた造語『サティスファイス』と名づけられたそうです。

 おもしろいのは、人生を通じて行なわなければならない類いの探求をどれだけ最大限にし、どれだけサティスファイスする (満足したところでやめる) かは、個々人によって大きなばらつきがあると判明したことです。しかも、適当なところで満足せずに最大限探求するマキシマイザーと満足した時点で探求をやめるサティスファイサーでは、後者のほうが幸福度が高いことがわかっています。たとえば、いまよりいい仕事がないか、常に目を光らせているよりも、いまの仕事に満足しているほうが、充実感ややりがいを感じられるということなのでしょう。著者は、確証バイアスが最悪といいつつも、サティスファイスの副作用と捉えることもできるとしています。

 著者は、認知バイアスの専門家でありながら、それでも認知バイアスから逃れられないと書いています。つまり、わたしが認知バイアスから逃れられる道はないということです。そうであれば、せめて幸福度を高められるというメリットに目を向けつつ、ここで学んだ、認知バイアスというものの正体を意識しながら過ごしたいと、わたしは思いました。

 そして、ある程度それを実現できそうな気がしました。それは、この本で紹介された数多くの研究結果のひとつに着目したからです。その研究では、英語を母語とするひとたちとは別に、広東語を母語とし、米国に来て間もない人たちにも同じ実験を実施し、ふたつの集団で明らかな違いがあるという結果になりました。著者は、個人主義と集団主義の社会の違いを原因としてあげ、中国のように集団主義で育った場合、他者が何を考えているのか、自分は他者からどう思われているかを絶えず意識しているため、自らの思いこみにとらわれにくくなっていると考えています。

 ただ、他者が考えていることも考慮する必要がありますが、そればかりを気にすると弊害も生まれます。要は、バランスが大事だということです。自分の幸福との兼ね合いを考えつつ、円満に社会生活を送るために、認知バイアスに対する知識が役立つことは間違いなさそうです。
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