2020年12月11日

「空ニ吸ハレシ 15 ノココロ」

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園田 由紀子 著
株式会社PHPエディターズ・グループ 出版

 帯には『往復書簡で描くある家族の物語』とも『実話を元に描く感動作』とも書かれています。いまの時代、実話が元になっていて往復書簡というのが、なんとも古風な雰囲気を醸しますが、2007 年から 2008 年にかけてのことなので、そう古い話ではありません。

 手紙をやりとりしているのは、夫と死別して老人ホームに入居した女性と、彼女の孫で入学を機に寮暮らしを始めたばかりの女子高生です。タイトルは、孫宛てに書かれた手紙に登場する石川啄木の詩の引用からきています。
 不来方 (こずかた) のお城の草に寝ころびて
 空に吸われし
 十五の心

 自らの若かりしころを思い、孫の年齢を思い、思い出した歌なのかもしれません。この祖母と孫の往復書簡が成立したのは、いまの若い世代のことばを説明しつつ祖母に宛てて手紙を書く理沙のやさしさと、孫の世代が知らない過去の話を伝えつつも押しつけがましい書き方を避ける妙子の思いやりがあったからだと思います。

 しんみりとする最後でしたが、いまの殺伐とした時代に心が和みました。
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2020年11月16日

「白内障かなと思ったら読む本」

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川原 周平 著
幻冬舎 出版

 眼にステロイドを使っていると白内障が進むという話を聞き、ステロイドを大量に使っている不安から、この本を手にしました。

 驚いたのは、眼科の手術でもコンピューターが導入されていることです。手術は、患者の眼を拡大して映し出す顕微鏡をのぞきながら行われます。著者が最新鋭の手術支援システムだと紹介する『カリスト・アイ』は、そこに術前の検査データやシミュレーション画像も映し出すそうです。

 これにより医師は、カリスト・アイが示す切開の位置などを画面で見ながら手術を進めることができ、安全かつ質の高い手術を実現することができるようになったそうです。ただ、高精度な機械を操作する医師にも相応の知識と技術が求められるため、誰でも容易く手術できるようになったわけではなさそうです。

 一番参考になったのは、白内障の手術をする病院を選ぶ際のチェックポイントです。

1. 硝子体手術ができる
2. 眼内レンズの選択肢が多い
3. 検査や手術に使う機器が新しい
4. 視能訓練士がいる
5. 『今すぐ手術を』と強要してこない
6. 乱視も矯正できる
7. 手術件数を過信しない

 5.だけは、素人でもわかりますが、そのほかの項目も将来参考にさせていただきたいと思います。
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2020年10月26日

「ザリガニの鳴くところ」

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ディーリア・オーエンズ (Delia Owens) 著
友廣 純 訳
早川書房 出版

 タイトルの「ザリガニの鳴くところ」とは、茂みの奥深く、生き物たちが自然のままで生きてるところです。この本は、まさしくそんな場所のすぐ近くを舞台にした小説です。

 物語は、1969 年、白人の青年チェイスがノースカロライナ州の湿地で遺体で発見されるところから始まります。その直後物語は、カイアという 7 歳の白人少女が湿地で暮らす 1952 年に戻り、そのあと、カイアの暮らしとチェイスの死が交互に語られ、物語が進むについれ、その 2 本の線が交わります。

 物語の最後で、チェイスの死が事故だったのか殺人事件だったのかが明らかにされるので、この作品をミステリ小説と捉えることもできます。

 でもわたしは、高等生物とされる人間に備わっているはずの理性や品格を捨て去り、ほかの生物と何ら変わることなく自分を優先して生きた人々とその後悔、そんな人々に孤独を強いられたカイアの成長などを描いた作品だと受けとめました。

 ある七面鳥の群れが、そのなかの 1 羽の雌を攻撃しているのを見かけた 15 歳のカイアは、むかし兄のジョディから聞いたことを思い出します。
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原因が怪我であれ何であれ、もし見た目がほかの鳥たちと違ってしまったら、捕食者の注意を惹きやすくなるので群れはその鳥を殺そうとすると。ワシを引き寄せてしまえばついでにほかの鳥も襲われてしまうから、そのほうがましなのだと。
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 人間にもそんな遺伝子が脈々と受け継がれていて、その本能に従って生きていると、疎外され続けたカイアは思ったのかもしれません。

 そして、人間社会からはじき出された女性から、すべてを覆いつくしてほしいと頼まれたであろう自然が、それを拒絶したように見えたことも、より一層悲しく感じられました。

 黒人には選挙権もなかったカイアの少女時代、虐げられ続けた黒人たちが、カイアに優しく接した姿が、白人たちの残酷さと対照的で心に沁みました。
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2020年09月22日

「全国民が読んだら歴史が変わる奇跡の経済教室【戦略編】」

20200922「奇跡の経済教室【戦略編】」.png
中野 剛志 著
ベストセラーズ 出版

目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】」を読んで、衝撃を受けたので、【戦略編】も読んでみました。新聞でも最近よく目にするようになった MMT (Modern Monetary Theory) が解説されています。

【基礎知識編】では、通貨が何かわからなくなったと書きましたが、【戦略編】では、通貨の需要がどのように生まれたのかが説明されています。

 通貨の場合、政府が納税義務を法定することにより、その支払い手段である通貨に需要が生み出されたと著者は、書いています。これは、政府が公共サービスを実施するために、税を集めるのではなく、通貨発行権を得るために税を徴収するように読むことができ、発想の転換が求められる考えです。

 そして、公共サービスを継続するために発行しているとわたしが考えている国債について著者は、財源確保のために国債発行は必要ないが、金利を調節するために必要なのだと、以下のように説明しています。
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@ 政府が支出を行うと、支出額と同額分だけ、民間事業者の預金が増え、同時に、民間銀行の日銀当座預金もまた、同額だけ増える。

A そうすると、日銀当座預金の超過が生じて、金利が低下するため、政府は、国債を発行して、民間銀行に売却し、金利の水準を維持する。

B その結果、財政支出は、それと同額だけ民間部門の預金を増やし、金利は不変となる。
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 つまり自国通貨の発行権をもつ国であれば、上限を気にせず、必要なだけ国債を発行できることになります。

 しかし、米国も日本もそうは考えていません。著者は、その理由を『レント・シーキング活動』(特定の集団、具体的には投資家や富裕層が自分たちの利益のために、ルールや政策を誘導する活動) だとしています。

 つまり、未来の国民のために財政健全化を謳っているけれど実は、労働者がますます貧しくなってもいいので、投資家などがますます富むことができるよう、消費税導入などの政策を誘導しているというわけです。

 いろいろ腑に落ちる点があり、MMT を正しいとする方が増えているのも納得できます。ただ、いままでと正反対の考え方にすぐには馴染めない気もします。
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2020年08月22日

「ぶり返す世界恐慌と軍事衝突」

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副島 隆彦 著
祥伝社 出版

 2012 年出版の本書の予測を読むのは意地悪なのですが、いまのパンデミックを考えると、戦争景気に魅力を感じる方々も増えるのではないかと、素人ながら心配になり、タイトルの「軍事衝突」を見て、この本を引っぱり出しました。

 著者は、わたしたちは歴史から学ぶべきで、@ 大災害が来て、A 大恐慌が来て、そして B 戦争が来るというパターンを忘れてはならないと警鐘を鳴らしています。歴史を見るとその繰り返しだから……というのがその理由で、これは歴史の法則であり、運命だと言っています。

 いまの新型コロナは、ひとつの大災害だと思います。このあと大恐慌がくるのか、この大災害を乗り越え恐慌を避ける知恵が現代の各国のリーダーにはないのか、注視したいと思います。

 そしてもう 1 点、景気の動向を予測するのは、誰にとっても難しく不可能といってもいいのかもしれないと、あらためて思いました。著者による、60 円台まで円高が進むという予測も、さる大手金融機関が破綻するという読みも、東京都心のタワーマンションさえ価格が下落するだろうという見込みも、的中していたとは言い難いと思います。

 恐慌が来る可能性を無視することもなく、景気動向予測に振り回されることもなく、過ごしたいと思います。
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