これが実際のコンセプト・アートのひとつです。アリスが意外にぽっちゃりとしています。子供の頃のわたしはアリスのこのドレスが大好きでした。ピンクでもオレンジでもなく、青。

この展覧会ではじめて知ったアニメーションでは、この「小さな家」が気に入りました。もの言わぬ家のはずなのに、その喜怒哀楽が家だけでなく、全体の風景として伝わってきます。

ウォルト・ディズニーから高い色彩能力を認められたメアリー・ブレアは、ディズニー・ランドの「イッツ・ア・スモールワールド」も手がけています。カラー・スタイリストとしての力量を見せ付ける作品のひとつだと思います。複数のコンセプト・アートが展示されていましたが、わたしが一番気に入ったのはこれです。どの国にも属さず、どの国にも属すようなデザインに、この色の暖かさが合っている気がしました。

実際のアトラクションでも、あふれる色彩やあらゆる人種の子供に囲まれると、平和のイメージが強く伝わってきます。新しいキャラクターがどれだけ登場しても、「イッツ・ア・スモールワールド」だけは色褪せない強さを感じます。
メアリー・ブレアは後年、作風が大きく変わったようです。それは、素人のわたしもわかるほど、大きな変化だったようです。そのなかで、わたしはこれが気に入っています。

クマが手にしているトランプはクマと同じように描かれているわけではなく、紙が貼られています。お茶目な雰囲気がなんとなくして好きです。
メアリー・ブレアは、1908年生まれ。商業画家としてのスタートを模索していた頃、ちょうど世界大恐慌の時期でした。そのころ立ち上がりかけていたアニメーション業界には、恐慌のために仕事を得られなかった優秀な人材が流れ込み、メアリー・ブレアもそのひとりだったと説明されていました。もし、好景気でメアリー・ブレアがディズニーの世界に入ることがなかったら、ディズニー映画は違っていたかもしれないと思えるほど、インパクトのある作品群でした。