Connie Willis 著
Bantam 出版
読み終えて思ったことは、「長かった」と「意外だった」のふたつにほぼ集約されます。
800 ページ弱のボリュームは、わたしにとってかなり長いほうですが、それでも最後まで読まされてしまったのは、キャラクター付けがリアルだったり、世の中の非情さを映していたり、感情移入できるだけの魅力が備わっていたからだと思います。
話が長くなっている理由は数多くあります。同じ話を繰り返すひと、妄想に固執し、自分ひとりの世界に浸りきっていながら、周囲を会話に引きこむひとが多く登場するのもひとつの要素です。ただ、そういったひとたちはどこにでもいるため、つい自らの経験に照らしあわせて読んでしまいますが、実は一種の伏線だと最後に判明します。
また、物語の舞台となっている病院が改築に改築を重ねたせいで構造が複雑化しているうえ、改装中で通り抜けられない箇所があったりして迷路化している描写も頻出し、話を長くしていますが、これも伏線です。
さらに、核心に近い部分としては、タイタニック号沈没のような悲劇的なシーンが繰り返されることも、話を長くしていますが、重要な伏線となっています。そして、そんな悲劇に魅了されている登場人物 Maisie は、物語の鍵となる女の子だと最後のほうで判明します。
読み終えてみると、繰り返される描写は、迷走していたわけではなく、伏線を印象づけるためだったのかという気がしました。
意外だったのは、読み始めてすぐ、NDE (Near Death Experience)、いわゆる臨死体験がおもなテーマになっているとわかったにもかかわらず、最後まで惹きこまれてしまったことです。科学を信じ、神を信じられない、わたしのような者でも、リアリティを感じてしまう構図がとられています。死後の世界を盲信するひとたちと、脳内物質や脳神経を研究する科学者たちの対立が、双方の言い分を代弁するかたちになっています。
何よりも意外だったのは、結末です。主人公 Joanna Lander の発見がどう結実したか、彼女の発見を周囲の友人たちがどう引き継いだかを知るだけでも読む価値はありました。読後感がよく、思わず本のボリュームを忘れてしまったほどです。SF を読んで、若いひとたち、特に子どもたちにこんなことが起こってくれれば……と、思うことは、わたしにとって珍しく、印象に残る作品でした。

