
S・J・ローザン (S.J. Rozan) 著
長良 和美 訳
東京創元社 出版
いつものビルとリディアのコンビに、「永久に刻まれて」の「春の月見」で登場した、美術関係に詳しい探偵ジャックが加わって、いつもとは違う雰囲気で進行します。
ある美術作品を探すという調査依頼なので、ジャックは脇役というより、調査の方向性を決める判断力を備えたチームメンバーのように見えます。そのため、シリーズ11作目は、これまでの基本パターンが破られた印象を受けました。これまで長篇を10作読んできたわたしから見れば、読みなれたビルとリディアの活躍が少なくて残念です。
ただシリーズ作品は、マンネリズムに陥りやすいので、その観点からは評価できると思います。また今回は、歴史的事件を背景にしている点や国務省や総領事館の思惑が絡んでくる点から、かなり国際的な事件になっていて、ビルやリディアが扱う事件に広がりが見られた点も読み応えがありました。
これで当シリーズ作品をすべて読み尽くし、新作を待つ状態になりました。今後、ジャックがどう関わってくるのか、ビルとリディアの関係に進展はないのか、その2点が気になります。