2025年04月19日

「ChatGPT 翻訳術」

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山田 優 著
アルク 出版

 この本では、AI、特に ChatGPT などの大規模言語モデル (LLM) が得意とすることが説明され、どう対話すべきか、つまりプロンプトがいくつか紹介されています。特徴的なのは、翻訳を業としないものの、英語を使う立場のひとたちが、どのように ChatGPT の力を借りたらいいか、具体的に説明されている点です。

 翻訳を仕事にしていないと、翻訳をどういった観点から評価すればいいのか、何をもってよい翻訳とすべきかわからないものです。著者は、それを『正確性』と『流暢性』に分け、翻訳を生業としないビジネスパーソンの流暢性より機械翻訳のそれが優れていることを指摘し、流暢性を補うためのツールとして AI を勧めています。
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 これらの数字は、たとえ TOEIC のスコアが高く、ある程度正確に英語を使えても、流暢性においては機械翻訳よりだいぶ劣るという点で説得力があります。また、著者は、正確性を担保するための工夫や流暢性を向上させるために必要な知識を紹介しています。
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 さらに、翻訳の工程を『前工程』、『制作工程』、『後工程』と分け、翻訳そのもの、つまり『制作工程』だけでなく、『前工程』も『後工程』も、AI と一緒に取り組めば、精度があがると述べています。機械翻訳のために、ひとがプリエディットやポストエディットを行なっていたのが、いまは AI と対話しながら進められるというわけです。

 たとえば次は、用語集を使った翻訳を AI に依頼するプロンプトですが、そのほかチェックを依頼する方法やひとの理解を助ける説明の求め方なども紹介されています。
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 プロンプトテンプレートを使いながら、自らテンプレートを増やしていきたいと思える本でした。
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2021年11月08日

「一生使える 見やすい資料のデザイン入門」

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森重 湧太 著
インプレス 出版

 プレゼンテーションに限ったことではありませんが、資料を作成する際、いつもフォントで悩んできましたが、その問題に対処する基本がこの本に載っていました。

 基本は次のとおりです。

@ くすんだ文字色……スライドの場合、文字が真っ黒だときつい印象になりがちなので、文字色を少しくすませることが推奨されています。(紙資料はこの限りではありません。)

A 少し広めの行間…… 1.1 から 1.3 がお勧めだそうですが、細かく設定するためには、PowerPoint の [ホーム]→[段落] で表示されるポップアップウィンドウの [間隔]→[行間] で設定する必要があります。

B 自然な区切りでの改行……ことばのかたまりを意識して改行し、極端に短い行をつくらないようにすると読みやすくなります。

C 文字数が少ないときは広めの文字間……見出しや表の項目名など、2〜4 文字くらいの短いことばの場合、文字間を広げると見やすくなります。

D 強調の基本は太字、次に下線……文字の強調には太字を使い、例外的に長文に限って下線で強調し、斜体は英文以外では使いません。

E 数字を強調しても単位は小さめ……重要な数字は大きくしますが、その単位は小さくしてジャンプ率 (大小差) を高めます。

 フォントのようには悩まず、いつも使っていた PowerPoint のテンプレートについて、著者は、余計な装飾が多いので使わないことを勧めています。スライドマスターを使い、配色とフォントを事前に設定することを推奨しています。配色については、ベースカラー、メインカラー、アクセントカラーの 3 種類を決めておくと良いそうです。

 フォントの件がすっきりしたので、もう少しデザイン関係の本も読んでみたくなりました。
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2021年10月19日

「世界国勢図絵 2021/22」

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公益財団法人 矢野恒太 記念会 編集/出版

 毎年発行され、2021 年の出版行で第 32 版になります。わたしの目を惹いた特徴がふたつありました。ひとつは、サブタイトルとして「世界がわかるデータブック」と謳っているだけあって、世界のデータが網羅されていることです。もうひとつは、出所が明確になっていて、例外事項もある程度脚注で説明されている点です。

 それぞれの具体例を紹介すると、前者の網羅性の場合、巻頭にある世界の『独立国の国名と首都』一覧では、国名が日本語と英語が併記されていて、それぞれの正式名称を調べる手間を考えただけでも全世界が網羅されている価値があると感じました。

 後者の出所については、わたしが現在もっとも興味をもっている金融関連データを取りあげてみます。『主な国の公定歩合、政策金利』が 2016 年、2017 年、2018 年、2019 年、2020 年の各年末と 2021 年 3 月末で表になっています。脚注には、次の記載があります。
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IMF Data "International Financial Statistics" (2021 年 6 月 1 日閲覧) により作成。同資料で Financial Interest Rates、Discount あるいは Financial Interest Rates、Monetary Policy-Related Interest Rate と記されているもの。# 印が Monetary Policy-Related Interest Rate。ほか、日本銀行「金融経済統計月報」(同年 6 月 1 日閲覧) により作成。日本は基準割引率および基準貸付利率 (従来「公定歩合」と記載)。中国には香港、マカオを含まず。ユーロエリアはリファイナンシング・オペレート。アメリカ合衆国は FF (フェデラルファンド) 誘導目標金利。
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 これだけの情報が詰まっていると、どこでデータを取得できるか、該当データのフィールド名は何かが瞬時にわかるだけでなく、事前に知識がなくても、市場金利を誘導するための金利の名前が国によって違うことに気づくことができます。また、自国については日銀の情報も参考になること、そのなかのどこに着目すべきかも知ることができます。

 急にリサーチを依頼されたとき、対象を知らずとも、まずどこから当たればいいか、さっと見当をつけることができる便利な本だと思います。
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2021年10月03日

「図解作成の基本」

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吉澤 準特 著
すばる舎 出版

 図解作成の基本を伝授する本だけに、図解作成に必要な考え方が、ひとつの図にまとめられていて、それを見るとすべてが伝わるようになっています。

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 最初に、キューブに注目します。ここでは、図解で押さえるべきポイント、(1) フォーム、(2) カラー、(3) ポジションそれぞれにおいて、基本のプロセス@からBを先に検討し、最後に必要に応じてCを加えることが勧められています。たとえば、(2) カラーの場合、白黒ベースの無彩色を基本とします。もし強調したい部分がある場合は、1 色だけベースカラーを選び、さらに複数を強調したい場合は、そのベースカラーに濃淡をつけて対応するというものです。もし、ベースカラーだけでは充分にアピールできない場合に初めて、ベースカラーと反対色にあたるアクセントカラーを用いる手順が登場します。

 必要最小限でスッキリさせるという、基本的な流れが (1) フォーム、(2) カラー、(3) ポジションで統一されていて、わかりやすいと思いました。

 次に、キューブの外側にある図形の使い方に注目します。図形ごとに何をあらわすかルールを定めることが勧められています。図形ごとに次のような意味づけが提案されています。(a) から (e) の範囲では、標準的な図形を使っていますし、意味づけの参考になると思います。

【a:情報や概念】
・四角形……具体性のある考え方、事実
・三角形……増加/減少、集中/拡大、上下関係、目標点
・丸四角形……抽象的な概念、主観的な意見、推測
・円・扇形……抽象度が最も高い概念、未確定な情報、割合

【b:つながる向きと強弱】
・線・矢印全般……順序、矢印方向への働きかけ、詳細、まとめ
・円弧・アーチ……線・矢印と同じ (円周に沿って配置)

【c:集合関係】
・かっこ全般……カサ内側の要素のまとめ、外側の包含関係

【d:時間の流れや変化】
・矢羽・ブロック吹き出し全般……時間の単位・流れ、結果

【e:理由や説明】
・吹き出し全般……理由や追加情報、憶測、心理的情報

 そのほか、図全体としてのパターンの使い分けについても、わかりやすく図になっていて、図解の要点が伝わってきます。

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 いずれの図も、伝える力を見せつけるような力作だと思います。
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2021年07月23日

「FACTFULNESS ファクトフルネス」

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ハンス・ロスリング (Hans Rosling)/オーラ・ロスリング (Ola Rosling)/アンナ・ロスリング・ロンランド (Anna Rosling Rönnlund) 著
上杉 周作/関 美和 訳
日経BP 出版

 タイトルの FACTFULNESS は、ハンス・ロスリング氏による造語で、事実にもとづいていることを指しています。著者たちによると、人は、さまざまな本能に妨げられ、誤った思い込みによって、自分が接していない世界に対し事実にもとづかない認識を持っているのだそうです。

 この本の最初には、自分がそうした誤解をしている側の人間かどうかを確かめるためのクイズが用意されています。自分の職業を考えると恥ずかしいのですが、わたしも誤って認識している側に含まれていました。

 この本では、そういった誤った認識を誘発する本能、@分断本能、Aネガティブ本能、B直線本能、C恐怖本能、D過大視本能、Eパターン化本能、F宿命本能、G単純化本能、H犯人捜し本能、I焦り本能、を紹介し、それら本能の存在にあらかじめ気づき、事実にもとづかない思い込みによる判断をくださないようそれぞれに対する具体的な注意点が説明されています。

 わたし自身、どの本能にも引きずられているように思いますが、特に、ネガティブ本能 (世界はどんどん悪くなっているという思い込み) が強いのかもしれません。たとえば、世界的に見て収入格差はどんどん広がっているのではないかと感じています。

 著者は、そういったとき、数字など事実をもとに確かめるよう勧めています。収入でいえば、いまだに 1 日 1 ドル以下で生活する方々がいるいっぽう、莫大な収入を得る方が次々と登場しているのは事実で、人々の収入をヒストグラム化すると、横軸は広がっています。ただ、全体的な分布は右側にシフトしていっていることが見てとれるはずだと著者はいいます。

 さらに著者は、10 の本能がどう利用されているのかも指摘しています。わたしたちには、外部の雑音から自分たちを守るための防御壁のようなものが備わっていて、そこには 10 個の穴があり、それぞれが前述の本能と対応し『分断本能の穴』『ネガティブ本能の穴』『直線本能の穴』となっています。マスメディアは、そのことを十分理解していて、その穴を通り抜けられない情報を流そうとはしません。つまり、わたしたちは、マスメディアが本能の穴を利用していることを認識し、防御壁を通った情報に踊らされないようにする必要があるというのです。

 わたしにとっては意外に見える数字を多方面にわたり知ることができた、とにかく衝撃的な一冊でした。
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