
山田 優 著
アルク 出版
この本では、AI、特に ChatGPT などの大規模言語モデル (LLM) が得意とすることが説明され、どう対話すべきか、つまりプロンプトがいくつか紹介されています。特徴的なのは、翻訳を業としないものの、英語を使う立場のひとたちが、どのように ChatGPT の力を借りたらいいか、具体的に説明されている点です。
翻訳を仕事にしていないと、翻訳をどういった観点から評価すればいいのか、何をもってよい翻訳とすべきかわからないものです。著者は、それを『正確性』と『流暢性』に分け、翻訳を生業としないビジネスパーソンの流暢性より機械翻訳のそれが優れていることを指摘し、流暢性を補うためのツールとして AI を勧めています。

これらの数字は、たとえ TOEIC のスコアが高く、ある程度正確に英語を使えても、流暢性においては機械翻訳よりだいぶ劣るという点で説得力があります。また、著者は、正確性を担保するための工夫や流暢性を向上させるために必要な知識を紹介しています。


さらに、翻訳の工程を『前工程』、『制作工程』、『後工程』と分け、翻訳そのもの、つまり『制作工程』だけでなく、『前工程』も『後工程』も、AI と一緒に取り組めば、精度があがると述べています。機械翻訳のために、ひとがプリエディットやポストエディットを行なっていたのが、いまは AI と対話しながら進められるというわけです。
たとえば次は、用語集を使った翻訳を AI に依頼するプロンプトですが、そのほかチェックを依頼する方法やひとの理解を助ける説明の求め方なども紹介されています。

プロンプトテンプレートを使いながら、自らテンプレートを増やしていきたいと思える本でした。