小倉 将志郎 著
日経 BP/日本経済新聞出版 出版
タイトルにある『金融化』を著者は、『資本主義の下で、広義の金融が、経済・社会に対して直接・間接に有する影響・役割が、徐々に高まっていくプロセス』だと説明しています。ただ、タイトルの『世界』に、日本は含まれていません。おもに米国を指しているようです。
著者は、いかに広範囲にわたって金融化が進んでいるかを表にまとめています。政府の金融化については、これまで考えたことはありませんでしたが、金融工学の発展など、金融の深化では目を瞠る変化がありましたし、企業の金融化についても実感があります。
たとえば、FRB 統計をもとに著者が作成した以下のグラフを見れば、米国の金融部門の伸びは、一目瞭然です。日本語でいうリーマンショックの前後を除いて、税引前純利益は右肩あがりで伸びています。全産業に占める割合は、ピーク時には 30% を超えていました。
著者は、企業が『利潤追求において、財・サービスの生産というコストと時間のかかるプロセスをスキップし、広義の金融的経路を通じて、金融市場の原理に突き動かされて、利潤追求を行おう』としてきたと指摘しています。たとえば、製造業が製造ラインの建設などに投資して収益を拡大するのではなく、金融部門を通じて収益をあげる方向に進んできたということでしょう。ほんの一例ですが、リーマンショック前の 2006 年時点で、主要企業の総収益に占める金融部門の貢献度は、GE で 33.3%、フォードでは 10.5%、GM で 16.5% だったそうです。
しかし、これだけ金融化が進んだ背景には、以下のように権力の中心に大手金融機関が鎮座していられるよう、結果的に政府が協力したことが影響していると見られます。たとえば、TBTF 政策 (経済への影響が大きすぎる企業の破綻を政府が防ぐ政策) のおかげで、大手金融機関は、税金の投入を想定し、高リスクの商品を扱ってきたのではないかという憶測が飛び交ったこともありました。
この本の最後には、この金融化の流れが縮小することはなく、ある程度制御されて金融化が進むか、極端に金融化が進むか、どちらかだろうと、著者の考えがまとめられています。そんな流れのなか、日本が得られる利益は、相対的に減少していくことになるのでしょう。そのいっぽうで、米国と同様に、リーマンショックのような金融危機の影響を受けることは経験済みです。辛い現実を突きつけられた気分です。

