森田 翔 著
翔泳社 出版
著者は、エーザイ株式会社で営業職に就いていた際、相手の行動変容を促すプレゼンテーションを研究して成果をあげたそうです。その後退職して現在は、効果的なプレゼンテーションがわからずにいるひとを支援するコンサルタントとして活躍中です。
この本を読めば、数々のハードルを超えられる気になるので不思議です。プレゼンテーションの目的を達成するには、まず自らの行動を変え、そのうえ相手にも行動を起こさせる必要がありますが、本書では、どちらの内容もカバーされています。
本書では、『マイクロソフト社のカナダの研究チームが 2015 年に発表した報告によると「現代人の集中力は 8 秒であり、金魚の 9 秒を下回る』と紹介されているとおり、ひとの集中力は長続きしません。そのなかで、相手の気持ちをつかみ続け、集中してこちらの話を聞いてもらうためには、数々の工夫が必要になります。
著者は、『瞬時につかむ 12 個のアプローチ』、『強力に鷲づかみする 5 個のアプローチ』、『永久につかみ続ける 4 個のアプローチ』と、相手の心をつかみ続けるために踏まなければならない段階ごとに、どうプレゼンテーションすべきか明らかにしています。いずれも、自らの習性に照らしあわせてみて、理にかなっているように見え、論理的な分析の賜物だと感じました。
たとえば、『恒常性維持機能 (ホメオスタシス)』という、あらゆる変化に対して自らの状態を一定に保とうとする機能がひとには備わっていて、この機能は思考においても働くそうです。つまり、新しいことに挑戦するには、『今すぐやるべき理由』を明確に伝える必要があるというのです。対策のひとつとして、『カリギュラ効果』をうまく活用すべきだと、著者は提案しています。『〜だけ』『〜まで』という制限を設けると、ひとの行動を促すことができるというものです。わたしも『期間限定』や『地域限定』といった文言には負けてしまうので、説得力を感じました。
また、脳は、ウイルスや細菌同様に、知らない情報を見聞きすると、脳幹 (関門の役割を担う脳の部位) がそれを異物とみなし、排除しようとするそうです。そう処理されないよう、新しい情報は、すでに知っている情報と比較しながら、伝える必要があります。そのためには、相手がなにに詳しいか、事前に情報を収集し、たとえ話をわかりやすくするのが効果的です。
このように、そうすべき理由が明確で、かつ、対処方法や事前準備の内容も網羅されているので、この本自体が読む『プレゼンテーション』のようでした。

