「このミステリーがすごい!2026年」の国内編、「週刊文春ミステリーベスト10 2025」の国内部門、「ミステリが夜みたい!2026年版」の国内篇の 3 冠で話題になった作品です。それだけの支持を集めたことから、いまの読者がどんな作品を読みたいと思っているか窺い知るのに、うってつけのミステリーだと思います。
わかりやすい理屈で成り立ち、構成が緻密で、読者に被害者と容疑者と見つけさせるために作られたジグソーパズルのような印象を受けました。まるで、正解に向かって、敷かれたレールのうえを一歩一歩進んでいくような読書体験でした。
読み終えたとき、すべてのピースが収まるべきところに収まったときのような爽快感がありました。全然関係ないと思われていた、最初のほうに登場した別事件が最後に結びついたときなど、まさに穴のように残った空間に、余ったピースをはめてみたら、ぴったり収まったという感じです。3 冠の理由は、そのあたりにあるのかもしれません。
そのいっぽうで、ジグソーパズルのピースとして、ひとの感情も組み込まれているように見えたことに少し違和感を覚えました。夫から衝撃的な事実を突然告げられたときの妻の判断があまりに迅速かつ冷静で、そんな風に即時に割り切れるものだろうか……と思ったり、正しい行ないに固執していた警察官が中年になってひとが変わったように違う考えをもつようになるのだろうか……と思ったり、きちんと説明されているものの、その説明に納得できない自分もいました。
ただ、全体としてよく練られた構成で、ミステリーとして見事に辻褄が合っているという印象が変わるほどではありません。矛盾するようですが、高い評価を受ける作品なのは理解できても、この作者の作品をまた読みたいかと問われると、そうは思わない自分もいます。
ミステリーを読みたい理由は、ひとそれぞれだと思いますが、ジグソーパズルを完成させるような楽しみを求めている方には向いている作品だと思いました。

