ピエ・ブックス 出版
本書では、『どうしようもなく魅力に感じる、コレクションして手元においておきたくなる、そんなたぐいの絵本』を『コレクタブル絵本』と呼び、Fabulous OLD BOOK (ファビュラス・オールド・ブック)、press six (プレス シックス)、UTRECHT (ユトレヒト)、pagina (パージナ) といった書店のオーナーたちや山田詩子氏、立本倫子氏、長崎訓子氏といった、絵本の制作に携わるイラストレーターたちが、これこそ『コレクタブル絵本』だと思う作品を紹介し、武蔵野美術大学教授の今井良朗先生がヴィンテージ絵本とデザインについて解説しています。
わたしが実物を見てみたいと思ったのは、イタリアのブルーノ・ムナーリ (Bruno Munari) の本です。『ページによって紙の種類が変わったり、紙でない素材でつくられていたり、ページに穴が開いていたり、切り込みが入っていたり。内容だけでなく、造本・判型・用紙など、本のあらゆる要素がデザインされている』そうです。
そんな作品に、『絵本 (Picture Book)』に対する自らのイメージが偏狭だったと気づかされました。子供たちがストーリーを楽しむのを助ける絵が添えられた本のように思っていましたが、もっと幅広く、ヴィジュアルブックと呼ばれる作品、ストーリー以上にグラフィックデザインあるいはグラフィックアートを楽しむような作品もここには含まれています。
今井先生は、『今の絵本はほとんどがオフセット印刷で、その点では、原画を忠実に再現するための複製手段という意味合いが強い』と説明したうえで、『古い絵本は木口木版、石版、描き版 (描き分け版) など、印刷の版式の特性がそれぞれにあって、そこを見るおもしろさも』あると紹介しています。1950 年代にはオフセット印刷が定着していたそうなので、それ以前の作品には、さまざまな制約があった分、工夫のあとが見られるということなのかもしれません。
また、Fabulous OLD BOOK のオーナーは、『私が魅力的だと感じるのは、主に 1940 年代中期〜 60 年代 (第二次世界大戦以降〜ヴェトナム戦争の影響を受ける以前) のアメリカ絵本、つまり私の考える "いい時代のアメリカ" で出版されたものです。デザインだけでなく、印刷、紙質、製本などの点から見ても、質が高く、洗練された素晴らしい作品がたくさん出版されているのです』と語っています。大量消費以前の時代は、絵本というモノをつくる姿勢も、現代とは違って、効率よりも大切にされていたものがあったのかもしれません。
ただ、わたしは、『昔はよかった』あるいは『昔の絵本はよかった』で終わってほしくないと思います。デジタル媒体ではなく、実体のある本を手にとって楽しんだり、感動したりすり読者がいれば、半世紀前と同じくらい、実験的な絵本や長く愛される作品がこれからも生まれてくると期待したいと思いました。
今井先生は、次のように語っています。『可能性は、僕はまだまだ無限にあると思います。絵本というのはどんな表現でもできるものですし、ページがあるという点で 1 枚の絵とは違いますから。大事なのは背景にきちんとしたデザイン的な考え方や、絵本づくりに対する考え方や、子供との関係を持っていることではないでしょうか。(中略) 本をつくる、モノをつくるという発想をしなければね。絵本というのはあくまでも子供が手にとって、ページを繰って見るものなのですから。その原点にもう一度立ち返る必要があると思います。』
子供たちがページを繰るたびに胸を高鳴らせるような、飽きることなくなんども手にしたくなるような絵本が、スマホに負けることなく、これからも大切にされることを願っています。

