米原 万里 著
文藝春秋 出版
「必笑小咄のテクニック」に続いて2冊めの米原万里氏の本。
何といっても、タイトルにインパクトがあります。「打ちのめされるようなすごい本」。どんな本だろうか、と想像は膨らみますが、話はこうです。
ある作家がある本を読み、「これではもう私が書く意味がない、と思ったほどすごい本でした」と、米原氏に打ち明けます。そこへ米原氏が、そんな本より、もっとすごい、この本で、「打ちのめされなさい」と言うのです。どちらも読まずにはいられないと思わずメモを取ってしまいます。
でも、すごい本はそれだけではないのです。米原氏の考えられない量の読書から選りすぐられた本に対し、するどい指摘や観察が加えられた読書日記や書評を読むにつれ、これを読みたい、読まなければ、という気持ちにさせられる本が次々と、しかも生き生きと目の前に現われてくるのです。なぜなら、米原氏の中で消化され、論理が組み立てられ、色々な本とその中のドラマが絡み合ってくるからなのです。
この本を1冊読み終えた頃には、読みたい本が山積みになり、なぜもっと今までにこんなにいい本を読んでこなかったのか、という後悔に捕らわれ、今からでも間に合うのか、という焦りを感じます。そういう意味では、この本を手に取るのにも、それなりの覚悟が必要になります。
そしてこの本のすごいところは、本に限った話題だけではありません。前半は読書日記、後半は書評という構成になっているのですが、前半の読書日記では、米原氏ご自身の癌との闘いやその備えとして読了された数々の本も紹介されています。
ご自身が癌であるという状況にありながら、癌に関する本および医療についても、他の本に対するのと変わらない客観的かつ本質的な指摘が連なっているのを見ると、彼女の優れた判断力および精神力を強く感じます。
幅広い知識、世界を見渡す視野、ユーモアのセンス、高い語学力、何をとっても、本当に惜しい人を亡くしたと、思わずにはいられません。

