2024年09月02日

「The Missing Piece」

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Shel Silverstein 著/絵
Harper & Row 出版

 以前、日本語で読んだことのある絵本です。誰にでも描けそうな、シンプルな丸い顔から、意外にもしっかりと表情が読みとれたことが印象に残っていて、古本屋で英語版を見つけたとき、衝動買いしてしまいました。文章から受ける印象をもとに顔の表情を解釈しているのか、顔がそれぞれ巧みに描きわけられているのか、自分でもわからず、なんども見返してしまった記憶があります。

 ただ、英語で読むと、日本語で読んだときとは印象が違う気がしました。日本語と比べてみたところ、この丸い存在との距離感に差があるように思えました。

 英語では、丸い存在が The Missing Piece を探しに行く場面は次のようになっています。
And as it rolled
it sang this song--
    "Oh I'm lookin' for my missin' piece
     I'm lookin' for my missin' piece
     Hi-dee-ho, here I go,
     Lookin' for my missin' piece"

 いっぽう、日本語は次のようになっていて、丸い存在のセリフ以外の部分も『ぼく』が語っているようになっています。
ころがりながら
ぼくは歌う
  「ぼくはかけらを探してる
   足りないかけらを探してる
   ラッタッタ さあ行くぞ
   足りないかけらを探しにね」

 英語で it sang this song とあるのと、日本語で『ぼくは歌う』とあるのでは、なんとなく受ける印象が違う気がします。it とあると、自分が第三者として it を見ている気がするのです。英語と日本語の主語の違いは、ほんとうに奥が深いというか、難しいです。

 だからといって、it を『それが』とすると、この丸い存在が妙によそよそしく感じられますし、違う言語である以上、同じにならないのが当たり前とわかっていても、この違いは興味深いと思いました。
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2007年06月06日

「Parts」「More Parts」「Even More Parts」

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Tedd Arnold 絵・文
Puffin 出版

 "put one's foot in one's mouth" (="put one's foot in it") のような、体の一部(parts)が熟語になっているのは、英語では珍しいものではありません。

 日本語でも、値段が高さが話題になるとき、「目が飛び出る」などの表現を使います。また、企業において、社長を補佐する重要なポジションに就いたとき、「社長の右腕になる」などと言うこともあります。もしこれらを、それぞれの単語を単純につなげた意味で想像すると怖いです。目が飛び出て、ころんころんと転がっていったり。社長の右の腕が、目、鼻、口などを持った人間だったり。

 この三部作の絵本では、子供が大人の会話を聞き、熟語とは知らず、個別の単語から想像したイメージに膨らませて、怖いものリストをつくるという設定になっています。熟語を体の一部に絞っているためか、どれも、おもしろい絵になってます。たとえば、"put one's foot in one's mouth"だと、口の中から、足の先が見えていて、本人は冷や汗をかいている、といった様子です。

 この絵本の中では、それぞれの熟語の意味は説明されていません。たぶん、大人と一緒に読んで、大人が説明してあげたり、もう少し年齢が上の子の場合、自分で調べてみようとしたりするのかもしれません。

 大人の私が見ると、それぞれの絵を見て、「たしかにそうだけど」と苦笑したり、中には、「あっぱれ」と大笑いしたり、楽しめます。

 特に、パート3の「Even More Parts」では、これでもか、というくらい体の一部を使った熟語が並びます。

−I lost my head.
−I keep changing my mind.
−I want all eyes on me!
−My ears are burning.
−My nose is running.
−I'm tongue-tied.
−Don't give me any of your lip!
−I have a frog in my throad.
−I sang my heart out.
−My stomach is growling.
−Please lend me a hand.
−It cost an arm and a leg.
−I put my foot in my mouth.
−I'd better toe the line.
−I made my skin crawl.
−I got all bent out of shape.
−I went to pieces.

 最後の"I went to pieces"なんて、体がみんなバラバラになってしまって、これでもか、といった感じです。

 意味を知っている熟語でも、知らない熟語でも、このデフォルメの激しい絵を見ると、笑ってしまいます。
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2007年05月24日

「Detective LaRue - Letters From the Investigation」

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Mark Teague 文・絵
Scholastic Inc. 出版

 私が見た数少ない英語の絵本の中では、「あと47万語で100万語!」で紹介した「Bunnicula」シリーズがダントツで見ていて飽きないかわいさだったのですが、それに匹敵するくらい飽きない絵本を見つけてしまいました。

 Ikeという犬が主人公です。LaRue家がフランスにバケーションに行っている間、残されたIkeは猫を2匹誘拐した容疑で警察に留置されてしまいます。Ikeは警察から、フランスにいるMrs. LaRueに手紙を送ります。絵本のおもな内容は、その手紙と猫2匹の誘拐事件に関する新聞記事です。

 Ikeの表情がなんとも豊かで、細かいところを見始めると、時間が経つのを忘れてしまいます。

 たとえば、Ikeがしかめっつらで葉巻をくわえタイプライターに向かっているところなど、笑えます。でもよくよく見ると葉巻ではなく、骨だったりします。そしてその近くにテーブルには、ドーナツが箱ごとドンと置かれています。アメリカの刑事ドラマなどで、警察関係者がドーナツを買いに行ったりしているシーンをよく見たのを思い出します。

 こう見ていくと、この絵本、大人向けかと思う点があります。まず、使われている単語が、ネイティブの子供でも、幼稚園児や小学校入りたての年代には難し過ぎるように感じます。内容もシニカルな部分が多いですし、出てくるものも古いのです。タイプライターも今どきこんなのあるのかという古めかしいタイプですし、電話も黒くてダイアル式です。絵本の原作自体が古いだけかもしれませんが、あまり子供向けといった感じはしません。大人が一緒に読んで適宜説明を加えながら、子供はIkeやその周辺キャラクターを見て楽しむということを想定しているのかもしれません。

 大人の場合、かわいいものが好きな方や絵の隅にある細かいおまけを見つけるのが好きな方には、息抜きのためぜひ手にとって欲しい絵本です。
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2007年04月11日

「I Like Me!」

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Nancy L. Carlson 著
Puffin Books 出版

 「本を読むわたし―My Book Report」で知った絵本、「I Like Me!」。絵本を卒業する年代になっても、著者の華恵さんが好きな絵本に選んだわけがわかるような気がします。

 昔、仕事関係の本か何かで読んだのですが、自分で自分のことを褒めてあげなければいけない、とありました。仕事でプロジェクトを運営し、それがクローズすると、やはり反省点を挙げ、今後に活かそうということになります。数字としては充分黒字になっても、反省点のないプロジェクトなどありません。結局は、反省点が列挙されることになります。

 そうなると、自然と気持ちは沈みます。そんなとき、「私は頑張ったし、悪くはない結果だった」と自分で自分を褒めるべきだというのです。人が褒めてくれなくても、自分は自分の味方であるべきという考えです。

 「I Like Me!」を読んで思い出しました。

 主人公であるブタの女の子の親友は自分自身。落ち込んだときでも、自分で自分を楽しい気分にするのです。たとえ、間違いをしてしまっても、何度でもチャレンジして、できる自分になってしまいます。そんな自分が大好きで、それはいつだって変わらないというのです。

 しかも、自分の丸いお腹や小さい足も好き、と外見上あまり一般受けしない自分の体のことも好きと堂々と言えるブタの女の子を見ていると、自然と笑顔になります。

 仕事などでストレスを感じ、出社拒否になったり、うつ病と診断される人が最近、増えていると話題になります。もし、そういう人たちも、自己肯定ができると、状況は違ったものになるように思えてなりません。

 こういう絵本に子供のときから慣れ親しんでいるということは理想です。でも、遅すぎるということはないのだと思います。「大人が絵本に涙する時」にもあるように、大人になってから、こういう絵本に接し、乾いた心が癒されてもいいのではないでしょうか。
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2006年07月30日

「Gaspard and Lisa: Friends Forever」 「Gaspard on Vacation」

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Anne Gutman / Georg Hallensleben 著
Alfred a Knopf 出版

 「いい歳して」と呆れられても、小さいぬいぐるみなどかわいい小物を買ってしまいます。自分からかわいさが無くなった分、持ち物で補ってもいいのではないか、というのが私の表の言い分です。裏の言い分は、「だってかわいいから」というだけなのですが。

 その中でも、ここ1年くらいで知ったリサとガスパール。表現が難しいのですが、あのモケモケ感が好きで、いくつか買ったことがあります。

 そんなリサとガスパールの絵本をSEGブッククラブで見つけてしまいました。「SEG社会人ブッククラブの読書指導に参加してきました」にあるとおり、SEGブッククラブでは本の貸し出しもしてくれるので、早速借りてきました。

 モケモケ感がかわいいだけではないとわかったのが、ガスパール。ちょっと可笑しい。「Gaspard and Lisa: Friends Forever」によると、リサとガスパールはペンパルで、リサが2回手紙を書き、ガスパールが0回書いたというのです。それって、ペンパルなのでしょうか?また、リサとガスパールが喧嘩したとき、絵では、ガスパールがリサに叩かれてひっくり返りそうになっているのに、ガスパールは、「リサにとって幸運にも、(授業開始の)ベルが鳴った。」と言うのです。どう見てもリサのほうが喧嘩に勝っていたのに。

 「Gaspard on Vacation」では、ガスパールのやんちゃぶりが描かれています。ガスパールの家族も総出演なので、こちらもキャラクターグッズでは見られない一面です。

 活き活きと本の中で動き回るリサとガスパール。ちょっとなごめる絵本です。

 この絵本はシリーズになっていて、ほかにも色々あるようなので、もう少し楽しみたいと思います。
posted by 作楽 at 00:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書(Age:4-8) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする