2021年04月29日

「James and the Giant Peach」

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ロアルド・ダール (Roald Dahl) 著
Penguin 出版

The WITCHES」と同じく、両親と死に別れた男の子が主人公のファンタジーです。たった 4 歳で孤児になった James Henry Trotter は、とても意地悪な Aunt Spiker と Aunt Sponge に引き取られ、丸々 3 年間こき使われて過ごしたあと、素敵で不思議な体験をします。

 顔じゅう髭だらけで禿頭の小柄なおじいさんに遭い、石にも水晶にも見える米粒大のものが何千と入った小袋をもらいます。その小さな粒は、緑色に輝いて美しいだけでなく、不思議な魔法の力をもっているとおじいさんは言います。小袋の中身を水に入れ、自分の髪の毛 10 本を加えて一気に飲み干すと、素晴らしいことが起こり、二度と惨めな思いをせずに済むと言うのです。

 胸躍らせた James は、しかし、その大切な小袋の中身を桃の木の近くでぶちまけてしまい、緑の粒は地面に吸いこまれたかのようにひとつ残らず消えてしまいました。おじいさんは、緑の粒を逃してしまったあとは、最初に緑の粒を見つけた者が魔法の恩恵に浴すのだと言っていたことから、James は、自分がチャンスを逃したと覚ります。

 こうして魔法の力により、タイトルにある Giant Peach が生まれ、紆余曲折を経て、James は、この大きな桃を乗り物に、緑の粒で同じく巨大化した 7 匹の仲間、Old-Green-Grasshopper、Centipede、Miss Spider、Silkworm、Earthworm、Glow-worm、Ladybird と共に冒険します。

 なんとなくジャックと豆の木の片鱗が感じられる物語ですが、どうでもいいようなところで正確だったり、桃に乗って旅する空は空想の世界だったり、地上と空のコントラストは読んでいると楽しくなりました。

 たとえば、Centipede (ムカデ) は、足が 100 あると周囲から言われると、正しくは 21 対だとやり返します。(調べてみたところ、オオムカデ科の場合、21 対の足があるようです。)

 また、Green-Grasshopper は、その名前から緑色をしていることがわかりますが、自らのことを short-horned grasshopper だから、バイオリンを奏でるように演奏できるのだと自慢しています。いっぽう、触覚が長いバッタ類は、翅をこすり合わせて音楽を奏でるので、バイオリンというよりバンジョーのような音色だと言うのです。さらに、自分の耳は、おなかにあるが、cricket (コオロギ) や katydid (キリギリス) は、前足に耳がついていると言って、James を驚かせます。

 これら昆虫の描写と正反対にあるのが、空の描写で、Cloud-Men なる集団が空における自然現象を担っています。彼らは、図体が大きいわりに子供のように振る舞い、雹を降らせても虹をかけても楽しそうです。

 物語の最後、James と 7 匹の仲間たちは、とんでもない場所にたどり着き、偶然による見事な着地を果たします。おばたちに虐められていた頃とは正反対の James のハッピーエンドに束の間幸せな気分に浸ることができました。
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2021年03月07日

「Dumbo」

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ディズニー (Walt Disney) 著
Ladybird Books Ltd. 出版

 古本市で見つけた本です。この本を目にしたとき、友人とのおしゃべりでよく『耳をダンボにして聞いてしまった』などと使っている『ダンボ』なのに、実際にどんな物語なのか、映画を見たこともなければ、本を読んだこともないことに気づきました。

 ダンボは、思ったほど恵まれた境遇にはありませんでした。大きいピンクの耳を笑われるだけでなく、ダンボのことを愛する母、ミセス・ジャンボとも引き離されてしまいます。

 でも、たったひとり、ティモシー・マウスがダンボの味方になります。彼は、赤の鼓笛隊の衣装を身にまとい、帽子にはご丁寧に羽根を挿しています。この小さな味方と、ダンボをいじめる巨大なゾウの面々のコントラストといい、ハッピーエンドといい、ディズニーらしい雰囲気がする作品でした。

 いまさらながらダンボの耳が飛ぶためのものと知って、『耳をダンボにして聞く』という表現を少し使いづらくなった気がします。
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2010年10月18日

「The Fur Person」

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メイ・サートン (May Sarton) 著
W W Norton & Co Inc 出版

 たった9歳の少年が今まで読んだなかでこの本が一番おもしろかったという手紙を自分に送ってきてくれたと、メイ・サートンのエッセイで披露されていたので、読んでみました。

 メイ・サートンがパートナーと住んでいた家に、野良猫が住みついた実話がもとになっています。物語はその野良猫の価値観で展開していくため、家の主人であるはずのメイ・サートンやそのパートナーは「家政婦」と呼ばれていたりします。つまり、自分の食事を用意したりする召使いだという猫の視点です。たしかに猫って、犬とは違って、そういう風に考えているんだろうなと思うような鷹揚さがある気がします。

 また、ヨガの運動(猫が伸びするしぐさは確かにそう見えます)をしたり、新聞を読み込んだり、しっぽの垂直具合やリズムで気分をあらわしたりするあたり、日々見かける猫から思い当たることばかりで、読んでいて9歳の少年が惹きつけられた魅力がわかりました。

 最高なのは、この猫には紳士猫になるための十か条があることです。そのうちわたしが特に猫らしいと感じたのは次の二つです。

一.名前を呼ばれても筋肉を動かしてはならない。聞こえなかったふりをせよ。
一.怖い目にあったときには、退屈しているふりをせよ。

 近所の野良猫が突然近くに飛んできたボールが当たりそうになったとき、一瞬びくっとしたあと、優雅に尻尾を立ててその場を立ち去ったときのことを思い出したり、友人の飼い猫の名前を呼んだとき、下々の者の相手はしてられませんといった風情で無視されたことを思い出したりしました。

 猫好きの方なら、そうそう、と頷きながら読まれるのではないかと思います。
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2010年03月15日

「Into the Wild」

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Sarah Beth Durst 著
Razorbill 出版

 さまざまなおとぎ話がモチーフになったファンタジーで、おとぎ話を読んだころを懐かしみながら楽しめました。

 昔、ワイルドというおとぎ話の支配者がいました。ワイルドのなかで暮らす人々は、強制的におとぎ話の登場人物にさせられてしまいます。そして、おとぎ話が「めでたし、めでたし」で終わると、登場人物はすべての記憶を失い、またおとぎ話が始まるのです。たとえば、おとぎ話「ラプンツェル」は、魔女がラプンツェルを塔の上に閉じ込めてしまい、ラプンツェルは長い髪を地上に垂らして愛する王子と密会する話です。

 この物語の主人公ジュリーは、そのラプンツェルと王子の娘です。ワイルドから自由になりたいと思ったラプンツェルと王子はワイルドと闘います。そして、身ごもったラプンツェルとラプンツェルを閉じ込めた魔女など、一部の人々だけがワイルドから逃れたのですが、王子はワイルドに残されてしまいました。

 それから5世紀経った現代、もう安全だと思えたラプンツェルは、ジュリーを産み育てます。ジュリーは、普通の暮らしに憧れながらも、数世紀ものあいだ生きている母親や元は魔女だった祖母とワイルドという秘密を抱えながら生きています。ワイルドはいまや、絡み合ったグリーンのような姿になって、ジュリーのベッドの下にいるのです。

 それが、あるとき、ワイルドは突如大きくなって街をのみこみ、昔のようにおとぎ話の世界を繰り広げていくのです。ジュリーはそんなワイルドを止めようと、ワイルドのなかに入っていきます。

 ワイルドのなかでは、いろいろなおとぎ話が展開され、ジュリーとワイルドの闘いもあり、懐かしい気分やひやひや気分が味わえます。続編「Out of the Wild」が出ているので、こちらも楽しみです。
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2010年02月22日

「Red Handed」

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Gena Showalter 著
MTV 出版

 ティーンエージャー向けロマンスです。

 舞台は近未来。宇宙戦争のすえ平和協定を結んだことにより、異星人も地球に居住する権利を得ました。しかし、殺戮を繰り返す不届きな異星人も多く、そんな奴らはA.I.R.という組織が自由に退治できる決まりでした。

 主人公のフェニックスは、17歳。ドラッグに溺れてしまい、母親によって矯正施設に送られてしまった過去をもち、母親に認められたいという強い気持ちを抱えながらも、たったひとりの家族である母親とうまくいかない日々を送っていました。

 そんなある夜、ドラッグで意識が朦朧とする女友達と屋外で過ごしていたとき、異星人に襲われてしまいます。命を落としてもおかしくない状況なのに、意識もはっきりせず戦えない友達を守るためにフェニックスは必死に戦います。そこに、A.I.R.のエージェントがあらわれ、ふたりは九死に一生を得ます。

 しかし、異星人に殺されかけたことをフェニックスの親に知られたくないA.I.R.は、殺されかけてぐったりとしているフェニックスを母親に届ける際、敢えて理由を説明しませんでした。その結果、母親はフェニックスがドラッグでぐったりしていたのではないかと疑います。

 一方、A.I.R.は、フェニックスの異星人との戦いぶりに感嘆し、A.I.R.のエージェント育成所に引き取れないかと母親に持ちかけます。母親はドラッグに娘が溺れていると思いこみ、育成所に娘を入れてしまいます。

 フェニックスは母親の信頼をえられなかったことを悲しみながらも、認められる存在になることを目指します。そうしてフェニックスは育成所で成長を遂げるとともに、恋に落ちます。

 残念ながら、ロマンスの相手があまり魅力的に映らず、わくわくと読み進めるというわけにはいきませんでした。異星人も登場するし、もう少しどきどきやわくわくがあると良かったのですが。
posted by 作楽 at 00:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書(Age:9-12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする