
Roald Dahl 著
Viking Books for Young Readers 出版
児童書に分類されるロアルド・ダール作品をある程度読んだつもりでしたが、今回の作品は、これまで読んだものとは随分雰囲気が違っていて、少し戸惑いました。
この作品では、主人公の Danny が、生後 4 か月のときに母親を亡くしたことを語りはじめ、成長にともなって父親との暮らしがどう変わったかを振り返り、9 歳のときに経験した印象深いできごとで終わっています。結びで、最高に楽しくて胸躍る時間を一緒に過ごせる父親だと彼が語るのを待つまでもなく、母親がいなくとも、貧しくとも、Danny が幸せいっぱいだと伝わってくる作品です。
戸惑ったのは、父親との忘れられない思い出として語られているのが、密猟という点です。密猟する森の所有者が、常に人を見下しているような嫌われ者であっても、飢えをしのぐためではなく楽しみのために密猟するのは、児童書のストーリーとして少し抵抗を感じました。しかも、Champion of the World は、密猟の最高のアイデアを生み出したことによるタイトルなので、しっくりこないまま読み進め、密猟が成功裡に終わって万々歳とならなかったことに、なんとなく安堵しました。
読み終えて思ったのは、ユーモアと意外性に溢れる展開に、この作家の持ち味が発揮されていたということです。
この作品では、気になることが 2 点ありました。ひとつは、主人公 Danny が眠る前に父親に語ってもらう話のひとつとして「The BFG」の Big Friendly Giant が出てくる点です。気になって、これまで読んだ児童書作品の発表年を調べてみました。
1961: James and the Giant Peach
1964: Charlie and the Chocolate Factory
1972: Charlie and the Great Glass Elevator
1975: Danny, the Champion of the World
1982: The BGF
1983: The Witches
「The BGF」は、この作品から生まれたのでしょう。もうひとつ気になったのは、Aniseed Ball です。Danny がとても美味しいと絶賛しています。地中海あたりで広く食べられているボイルド・スイーツ(Boiled sweets:飴玉のようなもの)の一種で、なかにアニスの種が入っているようです。読みながら、いつか食べる機会があればいいと思いました。
わたしが一番気に入っているロアルド・ダール作品「The BGF」の始まりを知ることができたのは意外な収穫でした。