2008年02月19日

「Sammy Keyes and the Dead Giveaway (Sammy Keyes)」

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Wendelin Van Draanen 著
Yearling Books 出版

 私のお気に入りのSammy Keyesシリーズは、主人公のSammyが7年生(中学1年生)になったところで始まっていますが、今回のこの「Sammy Keyes and the Dead Giveaway」で、Sammyは7年生を終えます。それだけに、内容はSammyの成長を感じさせるものでした。

 なんといっても、探偵としての一番のスケールアップは、ほんものの殺人事件が関わっていること。いつもほろっとさせられるSammy Keyesシリーズだけに、凶悪犯人がでてくるわけではありませんが、それでもやっぱり、殺人は殺人です。

 そして、女の子としての一番のできごとは、初デート。といっても、ふたりきりのロマンチックなデートではなく、昔でいうグループ交際みたいな感じです。それでも、初デートは、女の子にとってビッグイベント以外のなにものでもありません。

 ほかにも、Sammyが政治に少し関心をもつようになったことや、コミュニティをつくりあげていくのは自分たちだという意識をもつようになった点では、おとなの私が逆に見習わないといけないと思ってしまうくらいです。"土地収用権"などという難しいことばもでてくるのですが、行政の決定にしたがって、立ち退きを迫られる人びとは珍しくもなんともないことを考えると、やはり10代のころから関心をもつことはいいことなのでしょう。

 このSammy Keyesシリーズではいつも思うのですが、Sammyが謎ときとして関わる事件と、Sammyの日常でのできごとがいつもうまく絡まっています。私から見た今回のキーワードは、"自由"。本当の自由とは何か?

 Sammyは今回、学校の先生が大切にしているインコを死なせてしまいます。つがいで飼われていたインコですが、ある日偶然Sammyが朝早く登校した日に、教室に置いてある鳥かごから1羽だけ逃げ出してしまいます。教室に入ってそれに気づいたSammyは教室の外にインコがでないように、ドアを閉めようとしますが、重いドアでなかなか閉まりません。それを力ずくで閉めるSammy。やっと閉め終えたSammyは、インコがドアに挟まって死んでいるのに気づきます。死んだインコを手にして呆然とするSammy。そこに、宿敵のHeatherが教室に向かってきます。何を言われるかと、こわくなったSammyは隠れます。そしてその後、インコがいなくなっていることに気づいた先生は、朝一番に登校してきたと思われるHeatherがインコをどうにかしたと決めつけてしまいます。本当のことを知っているのは、Sammyだけ。Sammyは事実を話さなければ、と思いながら、ためらい苦しみます。

 その苦しみから解放されたSammyが味わうのが本当の自由。そして、ほかにも、本当の自由を手にするひとがいます。

 今回も色々なできごとが次から次へと起こり、いろいろ考えさせられたSammy Keyesシリーズでした。
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2008年01月31日

「Sammy Keyes And the Psycho Kitty Queen」

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Wendelin Van Draanen 著
Yearling Books 出版

 第1巻の「Sammy Keyes and the Hotel Thief」からずっと読んでいるSammy Keyesシリーズ。好奇心旺盛で聡明だけど、ちょっとやんちゃな13歳の女の子、Sammyが事件を解決するのですが、そのSammyが、なんともいいのです。13歳らしい無邪気さで暮らしているのですが、なにげない日常のできごとの中で、どんどん成長していって、人を許したり助けたり。いつもほろっとさせられてしまいます。

 そのシリーズの中でも、これはずば抜けておもしろいと思いました。今回のイベントはSammyの誕生日。Sammyは理由があって、母親と別居していて、祖母に預けられています。その祖母のもとに母親が誕生日前に訪れてきて、話があるというのです。また、ここもややこしいのですが、Sammyには父親がいませんし、誰が父親かも知らされていません。そして、Sammyは想像するのです。母親の話は父親のことに違いないと。しかし、結果は大ハズレでした。母親はこういうのです。あなたの14歳の誕生日は、実は13歳の誕生日だと。Sammyが幼稚園に上がる1年前、出生証明書を偽造し、1年早く幼稚園に入れたのだと。Sammyは激怒します。しかし、これは物語の始まりでしかありません。そのなんともツイていない、2度めの13歳を過ごさないといけないと知らされた日、Sammyは猫の死体をごみ捨て場で続けざまに見つけます。気になった彼女は友だちのHollyと一緒に、ごみ捨て場を探してあるき、全部で4匹の死骸を見つけます。

 なぜ猫がこんなにたくさん殺されていたのか。誰の犯行なのか。Sammyは今回も抜群の行動力と冴えた観察力で、事件を解決します。

 私が、この児童向けミステリシリーズが好きなのは、登場人物が個性豊かで、必ずしも「いい人」では括られない人がたくさんでてくること。そして、その人たちとぶつかりながらも、SammyはSammyなりに、その人たちを受け入れていること。実際の生活でも、いい人とばかり出会うわけにもいかないし、そういう人たちともそれなりにうまくやっていかないとことを考えると、リアリティがあって、子ども向けの本であることを忘れてしまうのです。

 そして、何より、そこにはSammyの成長があって微笑ましいのです。Sammyを祖母に預けて夢を実現しようとしている母親を理解しようと努力したり、自分をいじめてばかりいた隣人を許したり、放っておけばいいのに困っているホームレスの女の子を強引に助けたり。この著者の人の描き方がとても魅力的だと思うのです。できれば、ずっと続いて欲しいと思うシリーズですが、もう残りも見えてきて、とても残念です。
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2008年01月18日

「The Fugitive Factor (On the Run 2)」

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Gordon Korman 著
Scholastic Paperbacks 出版

 ちょっと中だるみといった感じです。第1巻の「Chasing The Falconers」の展開の速さを思うと、なんとなく、ゆったりと進んでいるような気がして仕方がありません。

 また、なんとなく整合性がとれていないというか、それはありえないと思われる点も少し目立ちます。特に、警察の杜撰さ。警察署から、行方を捜したい人の免許証記録を盗みだすのですが、それがなんとも不思議。個人情報が管理されている部屋に簡単に入れたり、しかも電子データではなく、紙媒体で盗み出せるようになっているんです。それは、ありえないでしょう。普通は、電子データになっていて、それなりのセキュリティレベルにあるはず。一方、捜している人の宿泊記録をホテルから盗み出すときには、ホテルの電子化された宿泊記録から、名前や宿泊時期で検索して、簡単にお目当てのものを見つけ出してしまうのです。

 子ども向けとはいえ、ここまでしっくりこない部分が出てきて、テンポが落ちてくると、ちょっと残念。次の3巻を読んで、もとのスピード感やスリル感が戻ってこなければ、続きは知らなくてもいいかな、とまで思ってしまいました。

 次の3巻に期待したい気分です。
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2007年11月26日

「The Lion, the Witch and the Wardrobe (Chronicles of Narnia, Book 2)」

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C. S. Lewis 著
Harpercollins Childrens Books 出版

 ある方に教えていただくまで知らなかったのですが、このNarniaシリーズの著者であるLewis氏と「The Hobbit」の著者であるTolkien氏はある時期一緒にオックスフォード大学で教鞭をとっていて、かなり親しい間柄だったそうです。

 両氏とも、文学に興味を持ち、本を出版していたのですが、キリスト教と物語との距離についての意見は大きく違っていたようです。特に、この「The Lion, the Witch and the Wardrobe」に関しては、キリスト教を前面に出し、人気を得たLewis氏と、ストーリー性を重視し、キリスト教は物語の奥深くに存在すればいいというTolkien氏の意見は、まったく交わらないものでした。

 キリスト教をほとんど知らない私でも、「The Magician's Nephew (Chronicles of Narnia, Book 1)」を読んだときは、キリスト教を思い浮かべました。今回の「The Lion, the Witch and the Wardrobe」は、さらにキリスト教の根幹部分にせまるものテーマになっていました。キリストの復活です。

 自らの命を犠牲にし、その後、復活を遂げる。

 直球そのものといった感じです。そのあたりが、この物語を好きになれるかどうかの分かれ目かもしれません。あまりにキリスト教と強く結びついていて、好きになれないという意見も聞きます。

 今回の物語は、Peter、Susan、Edmund、Lucyという4人の兄弟姉妹が、不思議な洋服だんすに入りこむと、そこはNarniaとつながっていた、という話です。第1巻の「The Magician's Nephew」では不思議なリングをはめるとNarniaに来るというものでした。どうも毎回、Narniaに来る方法も来る子どもたちも違っているシリーズのようです。

 一番最初にNarniaに迷い込むのは、Lucyです。誠実で嘘など言わない優しい末っ子ですが、さすがにNarniaに行ってきたということは突拍子もない話で、ほかの兄弟姉妹に信じてもらえません。やんちゃなEdmundには、さんざんからかわれます。でも、そのEdmundもかくれんぼで洋服だんすに隠れ、Narniaに迷い込んでしまいます。そして、最後には4人ともNarniaに行き、色々な出来事に巻き込まれます。

 しかし、物語の主役はやはりキリストです。キリスト教に対して良い印象を持たれていない方にとっては、読む気がそがれてしまう本かもしれません。
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2007年10月22日

「The Magician's Nephew (Chronicles of Narnia, Book 1)」

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C. S. Lewis 著
Harpercollins Childrens Books 出版

 ある翻訳家の方がこういう話されているのを聞いたことがあります。

 英米文学の根底にあるのは聖書で、その聖書の一部のどの面をどう変えてストーリーにするか、何を付け加えてストーリーにするかを作家たちは考えているに違いない。それくらい、英語で書かれている本と聖書との関係は密接で、聖書を理解していることは、作品の背景を知ることにとても役立つ。ひいては、日本語に訳すときにも役立つ。

 たしかに、英米諸国における宗教の役割は大きく、文学作品にも影響を与えていても当然だと納得しました。

 その話を思い出したのは、この本の中に聖書からきたものだと思う場面がかなりあったからです。でも、聖書の教えを伝えるというかたちをとっているわけではありません。この本は「ナルニア国ものがたり」というような名前で日本語にも翻訳されています。宗教、特にキリスト教やユダヤ教と馴染みの薄い日本の土壌からか、宗教色が強い小説が翻訳されるケースは稀です。ビジネス面からいうと、そういう本は売れないのだと思います。そう考えると、客観的に見ても、この本は宗教の色が特別濃いわけではないと思います。

 この本は、タイトル通り、Narniaという国のChronicles(年代記)です。第1巻は、Narniaの誕生の巻です。Narniaは、私たちのいる世界とは別のところにあり、この本の表紙になっているリングを使って行くことができる場所とうい設定です。その誕生は、聖書に語られている創世記を思い起こさせる部分がかなりあります。

 Narniaと名付けたのは、Aslanという光り輝くライオンです。不思議な力を持ち、Narniaを支配しようとした魔女から守り、人間の男とその妻を王と王女に定めます。その王や王女を含め、人間たちはAdamの息子あるいはEveの娘と呼ばれます。またAslanは、すべての動物からつがいを選び出し、王と王女に代々、それらの動物を守るよう伝えます。そのあたりは、ノアの方舟を思い出させます。また、Narniaを最初に訪れた人間はDigoryという少年とPollyという少女です。(本のタイトルにある魔法使いの甥はDigoryです。)そのDigoryはAslanから遠くまで旅をして木の実を取ってくるよう言われます。その木の実は銀のりんごでした。Digoryがりんごを手にした途端、意地悪い魔女が現われ、そのりんごをAslanに持っていくのではなく、病気の母親に持っていけば彼女の病気が治るとそそのかされます。エデンの園を思い出させます。

 Digoryという少年は向こう見ずで失敗をしたりもするのですが、人のことを思う優しい気持ちももちあわせていて、物語にひきこまれてしまいます。児童書なので、勧善懲悪の傾向が強いのですが、そういうシンプルさも含めて、楽しめたので、次の巻も読んでみます。
posted by 作楽 at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書(Age:9-12) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする