2012年01月24日

「Gilda Joyce: Psychic Investigator」

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Jennifer Allison 著
Puffin 出版

 ある学生さんが、辞書にあるタイプライターという言葉を見て、シナリオライターやコピーライターのように職業を指す言葉だと思ったと聞いたことがあります。生まれたときからパソコンがあった世代にとってタイプライターとはそんなものかと驚きました。

 この本の主人公である13歳の少女は、そんなタイプライターをその重さにもめげずスーツケースに詰め、ミシガンからサンフランシスコまで出かけて行きます。

 サンフランシスコには同じ年頃の女の子がいる遠い親戚が住んでいて、そこで夏休みを過ごすことになったのです。自称霊媒師の主人公は、その裕福な親戚の屋敷で、幽霊騒ぎを解決しようと奮闘します。

 なにしろ13歳なので、探偵気分に浸りはするものの特にそれらしい結果を出せるわけがありません。突拍子もないことを言って大人を苦笑させたりします。それでも、同じ年代の女の子の悩みを同じ年頃の目線で解決するので、ほのぼのと読めます。件のタイプライターは、結末でなかなか粋な活躍をします。主人公にとっては、亡くなった父親と自分をつなぐ大切なタイプライターが、亡くなった者と生ける者とのつながりを果たします。

 中盤までの展開がゆっくりなので退屈ですが、それ以降は一気に読めました。
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2010年12月02日

「Poison Study」

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Maria V. Snyder 著
Mira 出版

 攫みの部分から意外性が感じられ、ページを繰る手がとまらないファンタジー作品です。

 主人公エレーナは孤児だった自分を育ててくれた恩人の息子を殺した罪により、絞首刑になることが決まっていました。しかし、その執行は条件次第で猶予されると知らされます。その条件とは最高司令官の毒味役を務めること。首吊りで一瞬のうちに死ぬか、毒味でじわじわと迫る死と向き合うかの選択を迫られ、生き延びる道を選んだエレーナは、逃げ出す機会を窺います。

 しかしそう簡単にことは運びません。逃亡を防ぐための毒を飲まされていて、毎日解毒剤を服用しなければ死んでしまうのです。殺した相手の父親からは命を狙われたり、自分がどの程度生き延びられるかが賭けの対象されたり、と次々新たな問題がもちあがります。

 また毒味役としての話だけではありません。魔法あり、恋愛あり、と盛りだくさんです。

 展開が速くできごとを連ねるのに忙しいせいか内面描写などが少なく、わたしは多少物足りなさを感じましたが、それでも次は何が起こるのか気になり急いで読み進めたくなりました。

 これは三部作の一作目で、このあと「Magic Study」「Fire Study」と続きます。

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2010年05月13日

「The Sixth Form at St. Clare's」

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Pamera Cox (Enid Blyton) 著
Egmont Books Ltd 出版

Fifth Formers of St. Clare's」の続き。シリーズ最終巻です。おもしろいトリックが仕掛けられているのですが、表紙でネタばれになってしまっている点が残念です。

 それでも、楽しめました。セント・クレアでの最終学年を迎えた双子パトリシアとイザベルはふたりして首席学生に選ばれ、その責務を果たします。もう真夜中にこっそり誕生日会を開くこともできなくなってしまいますが、1学期を終えただけで学校を去ってしまうヒラリーのために、先生から許可をとって堂々とパーティを開いてしまう行動力です。

 しかも、意地悪な同級生が、1年生が予定している真夜中の秘密の誕生日会を台無しにしようと企んでいることを知ると、無事誕生日会を開けるよう入れ知恵してあげるという憎い計らいまでできるようになるという成長ぶりです。

 個人的には、毎回愚かな真似をしてきたアリソンが下級生の助けになるほど成長したことがこの巻で一番楽しめました。

 子供向けの本だということもありますが、フェアであること、ユーモアを忘れないこと、助け合うこと、などの精神が貫かれていて、清々しく読めるシリーズです。実社会に出てしまうと、この作品で舞台となった学校のように品格ある場所に身をおくのはとても難しいので、読んでいてストレス発散になりました。全部で9冊読んだので、読み終えるのが寂しい気分になったくらいです。
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2010年05月11日

「The Christopher Killer (Forensic Mystery)」

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Alane Ferguson 著
Puffin 出版

 将来は法医学者になりたいと思っている17歳の女子高生キャメラインが主人公。父親と祖母と一緒に暮らし、母親はいません。幼少のころ、家を出ていったまま音信不通です。

 父親が検視官をしているため、その助手として働けないかとキャメラインは交渉し、あっさりと認められ、将来の夢にそなえて検視に立ち会ったりするようになります。ただ、とても小さな町に住んでいるので、そんな凶悪な事件が起こることは父親も想像していませんでした。それなのに、連続殺人の4人目の被害者を検視することになったのです。しかも、被害者はキャメラインのアルバイト仲間の女の子。

 事件と並行して、母親の行方についても進展があり、連続殺人事件と家族関係の再構築が二本の柱となって、物語が進行します。

 事件のほうは、法医学者としての仕事範囲、手順、医学知識などを読者にわかりやすく説明するためか、展開がゆっくりとなっています。加えて、キャメラインの観察力の鋭さを前面に出すために、小さなことも丁寧に描写されるため、ほぼ結末の段になるまでは、手がかりになることがひとつひとつ積み上げられるだけなので、ダイナミックさに欠ける気がしました。それでも、最後のほうはテンポよく展開し、とても楽しめました。

 あと、興味深かったのは霊能力者の登場です。「As Simple as Snow」にも登場しましたが、日本に比べ、米国では事件捜査への関わり方が深いのかな、と思いました。この霊能力者が実は、キャメラインが抱えるもうひとつの問題、家族のことを言い当てたのはおもしろいエピソードだと思います。

 シリーズになっている作品ですし、なかなか人気は高そうです。
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2010年04月15日

「Fifth Formers of St. Clare's」

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Enid Blyton 著
Egmont Books Ltd 出版

 「Claudine at St. Clare's」の続編。とうとう双子のパトリシアとイザベルも5年生です。4年生までは学年にひとつずつ放課後を過ごす部屋があったのですが、5年生になるとふたりに一部屋ずつ勉強部屋が割り当てられます。その一方で責任ある態度が求められ、後輩たちの手本になるべく努めなければならないのが、5年生です。

 この後輩たちの手本になる意味を履き違えてしまったミラベルは、高い授業料を払うことになってしまいます。上級生から選ばれるスポーツキャプテンになったミラベルは、すべての種目で自分の学校が優勝することを独断で目指し、体力や体格が劣る下級生にも厳しい練習を課します。また自分の立場を最大限利用して、週末のレジャーよりもスポーツミーティングを優先するよう全員に強制し、自身は試験を疎かにするなど学業そっちのけでスポーツだけに没頭します。その結果、下級生にも同級生にもそっぽを向かれ、学期末試験も落ちてしまいます。

 なんとも身につまされる話です。社会人になってもこういう暴走型の人はいます。しかし、権力や権限というものがつきまとう現実の会社組織とはちがって、ミラベルはみんなにそっぽを向かれたことで目を覚まし、友人に支えられ再生します。このシリーズを読むと、学校というところは社会の縮図だったのかもしれないと思います。(実際に学校に通っていたことは、頭が空っぽで何も考えていなかったのですが。)

 そのほかにも詩人を目指す新入生が入ってきたり、相変わらずいろいろある学校です。最後年末に、翌年の首席に双子がふたりとも選ばれることが決まります。その翌年というのが卒業年度になります。もう終わりが見えてきてしまいました。
posted by 作楽 at 00:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋書(Young Adult) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする