2009年01月07日

福祉国家イギリス

 上智大学で受講している、「クィーンズイングリッシュで学ぶ現代英国事情」シリーズ。8回めの授業は「福祉国家イギリス」でした。

 わたしの中のイメージでは、福祉国家と言われれば、スウェーデンが思い浮んでいたのですが、講義を聴いて、イギリスも福祉国家なんだと納得しました。

 現在の英国の福祉のもとになっている法律は、1946年の"National Insurance Act"と1948年の"National Health Act"です。前者は、失業時、疾病時、死亡時の保障や年金に関わる法律で、後者は医療に関する法律です。

 昨今の不景気を見ると、失業も怖いのですが、それにもまして怖いのは健康体でなくなったとき。働けなくなり、治療を受けられなくなるのでは、と危惧してしまいます。しかし、英国の場合はそういう心配はなさそうです。"The NHS(The National Health Service)のお陰で、ほぼすべての医療を無料で受けることができます。この「無料」の考え方ですが、"Free at the point of delivery"と言われています。つまり、医療を受けるときは無料ですが、税金などのかたちで、すでに支払っているという考え方です。

 NHSの場合、各人は、GP(General Practitioner)と呼ばれる一般開業医に登録します。体調に異常を感じた場合、風邪でも皮膚病でも、とにかく一旦GPで診察を受けます。GPが症状から病院を紹介する仕組みです。病院で診察にあたる医者は、Hospital Specialistと呼ばれる専門医です。一般開業医でも専門医でも、治療してもらうのはすべて無料です。治療費が必要になるのは、歯科検診や眼科検診などほんの一部です。それらも、子供、老人、失業者は無料で受けることができます。

 その上、医療が無料で受けられる範囲は外国人にまで及ぶと聞いて、さらに驚きました。もちろん、治療目的で入国すれば話しは対象外ですが、英国で交通事故にあった外国人などは無条件に無料で医療を受けられるそうです。

 ここまでだと、夢のような話ですが、実際は、NHSにも問題はあるようです。一番の問題は、医療の質の低下です。費用が膨らみ、清掃などの費用がカットされ、不潔なベッドやシーツが使われたり、もっとひどい場合は、広範囲に感染が広がったりします。MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)やClostridium difficile(クロストリジウム・ディフィシレ)など、Superbugsと呼ばれる耐性の強い菌が拡大した場合は、最悪の結果になったりします。また、長蛇の列が日常化しているそうです。

 上記のような問題は、日本でも同じだと思うのですが、ケアリー先生によると、日本の病院は最高だということでした。何よりも、看護師たちの患者を助けたいという気持ちに溢れた対応の良さは英国では考えられないレベルだということでした。

 「福祉」でどこまで考えるか。最近の不況や少子高齢化の現実のなか、考えさせられる問題でした。
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2008年12月25日

英国の中等教育と大学

 上智大学で受講している、「クィーンズイングリッシュで学ぶ現代英国事情」シリーズ。7回めの授業は「中等教育と大学」でした。

 中等教育ということばを日本の学校制度に当てはめると、中学校や高校に該当するのだと思います。日本同様、公立学校と私立学校があります。

 公立学校の義務教育は、16歳までです。ケアリー先生によると、日本ではみな親は教育熱心のようですが、英国ではそういう親ばかりでもなく、16歳になると学校をやめて、家計を助けるために働くよう言う親が多いとのことです。公立は、Comprehensive Schools(総合制中等学校)とState Grammar Schools(グラマースクール)があります。Grammar Schoolというのは、ラテン語やギリシャ語のグラマーを教えることから名前がつきました。ラテン語やギリシャ語を学ぶのは、高等教育前提になるので、一般的には大学進学を想定している学生が通うそうです。State Grammar Schoolに入学するには、The Eleven Plus Exam.という試験に合格しなければなりません。

 私立は、Public SchoolsとGrammar Schoolsがあります。Publicといいながら、私立というのが以前から疑問だったのですが、ケアリー先生の説明によると、富裕層の子弟が入学する私立ですが、Localに募集するのではなく、全英から募集するので、Publicだそうです。全寮制が基本なので、実際、全英どこからでも入学できます。パブリック スクールの特徴としてあげられるのは、以下だそうです。
−ギリシャ語やラテン語などの古典に力を入れている
−寮制(HousemasterやHousemistressがいて、親代わりになるシステム)
−宗教と結びついていて、学校にチャペルがあるのが一般的
−スポーツに力を入れている。ラグビーはパブリック スクールのラグビー校から生まれた)
−規律が厳しい

 中等教育のあとの大学は、設立時代によって、特徴がわかれます。ケアリー先生の説明では、T〜Wの4分類にわけられています。

T. (Yellow Stone)
設立時期: 中世
具体例: オックスフォード大学、ケンブリッジ大学
特徴: 美しい街の中心に位置する

U."Red Brick"
設立時期: 産業革命後
具体例: ロンドン大学、マンチェスター大学、リバプール大学
特徴: 工業都市の中心に位置する

V."Pate Glass"
設立時期: 第二次世界大戦後
具体例: イースト・アングリア大学、ケント大学、サセックス大学
特徴:すでに街ができあがったあとに設立されたので、美しい街の端に位置し、芝生のあるようなキャンパスを持つ

W.(New Universities)
設立時期: 現代(V以降)
具体例: ウェストミンスター大学、グリニッジ大学
特徴: 大学の大幅増設が行なわれたため、前身はPolytechnics(専門学校)だった大学が多い。

 なんといっても、イギリスを代表する大学はオックスフォードとケンブリッジでしょう。それらは、あわせてオックスブリッジと呼ばれるそうですが、当事者同士は、たがいにライバルとして相手校を強く意識しているそうです。

 その大学への入学システムは、きわめて合理的ながら、進路の決定の早さに驚いてしまいました。

 まず、16歳のときに、GCSE(General Certificate of Secondary Education)という試験を受験します。科目は、5、6科目から8、9科目受験するのが平均的だそうです。基本的に選択した教科によって、次のレベル(A Level)で選択できる範囲が決まってきます。

 次に17歳から18歳で"A"(Advanced) Levelと呼ばれる試験を3、4科目受験します。これは、自分が通っている学校で受験できますが、外部で採点され、公正さが保たれるようになっています。この受験科目とグレード(AからEで+や-がつくこともあります)によって、入学できる大学が決まります。たとえば、4科目受験したとして、オックスフォードやケンブリッジなどの場合は、オールAの成績でそのうえ面接(オックスブリッジの教育が必要かどうかを見極めるための面接と言われています)を突破しなければなりません。その下のレベルだとAAAB+やAABBのような成績が求められます。

 実際の大学への申請は、1月/2月の時期に、"Central Application"と呼ばれるものに、希望する4大学を記入し、先生に予想されるグレードを記入してもらい、"Central Application Office"に出願します。

 その希望を集計し、グレードに応じて、実際に入学できる大学が通知されてきます。17歳から18歳で受験するA Levelによって、入学できる大学も進路もほぼ決まります。(たとえば、ラテンやギリシャなどの古典を受験した学生に、企業経営者になる道は事実上ないそうです。)

 合理的といえば合理的です。しかし、進路を間違えた場合、やり直しがきくのか、気になりました。
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2008年12月04日

英国外交関係

 上智大学で受講している、「クィーンズイングリッシュで学ぶ現代英国事情」シリーズ。6回めの授業は外交関係。といっても、時間が限られているので、英連邦、EU、米国、フランス、日本に限定した内容でした。

 かつて大英帝国の時代があったことを忘れていても、英連邦(the Commonwealth of Nations)のことを聞くと、英国が植民地をたくさん持っていた時代を思い出します。また、ケアリー先生の説明を聞いていて思ったのは、英国人にとってはThe Commonwealthといえば、英連邦のことをいうのだと思います。(わざわざof Nationsなどと言わないようです)

 ケアリー先生の説明では、英連邦には45ヶ国が加盟するとのことでしたが、今、Wikipediaで調べると、53ヶ国になっていました。元々英国植民地ではなかった国も加盟できますから、日々変動があるのでしょうか。ちなみに、あとから加盟した国には、カメルーンやモザンビークが例に挙がっていました。逆に、脱退した国の例として挙げられたのが、あのジンバブエ。恐ろしいインフレ状況にあり、たった一食分の食糧を買うのでさえ、抱えきれないほどの旧紙幣がいるということです。

 これだけ加盟国が多いと友好的な関係にある国とそうでない国ができるのは自然なことです。特に友好的な関係にあるのは、カナダやニュージーランドだそうです。今でも英国に行くことを英語で"going home"というそうです。(英国に親戚がいるわけではなくても、terminologyとしてそう言うそうです。)homeって幅の広い単語です。反対に疎遠な関係になりがちなのは、インドやパキスタンなど、宗教が異なる国々だそうです。

 英連邦の加盟国同士では、大使館や大使を派遣することなく、High Commission(高等弁務局)をおき、High Commissioner(高等弁務官)を派遣するそうです。また、Common Wealth Gameという英連邦内のオリンピックゲームのような大会が開催され、かなり盛り上がるそうです。

 次に、EU(European Union)との関係。EUの前身であるEC(European Community)は、フランス・ドイツ・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクでスタートし、英国は入っていませんでした。英国は加盟するよう招待を受けながらも、英連邦との関係を尊重し、加盟しなかったようです。その後、英国経済が傾き、横のつながりを求めて、1962年に加盟を申し入れしたのですが、フランスの拒否にあいます。1968年、再度加盟申し入れするも、またもフランスに拒否されます。1973年、ふたたび加盟申し入れし、やっとフランスにも承諾されます。しかし、EUとも密接な関係にはないように見えます。たとえば、貨幣もユーロを使っていません。未だにポンドです。ケアリー先生によると、EUと英国の関係は、"semi-detached relationship"だそうです。つかず離れずとでもいう感じでしょうか。

 次に、米国との関係。英国の元植民地で最初の独立国である米国とは今も良好な関係にあり、裁判制度など、米国は英国の制度を基盤としたものを数多く有しています。また、地名も英国から名付けたものが数多く残っています。(英国のYorkが米国でNew Yorkになったのは有名な話。)しかし、その一方で、一般の人々の間では、お互いの英語、米語の発音の違いに敏感で、お互いに相手の発音を嫌っているとのこと。ケアリー先生によると、米国と英国の関係は、"The Special Relationship"だそうです。

 次に、フランスとの関係。海を隔ててたった21マイルしか離れていない隣国であり、親密な面もある一方、お互いを強く意識している関係だそうです。英国の子どもとフランスの子どもの交換留学は昔から活発な交流があるそうです。ホームステイというスタイルです。ケアリー先生によると、フランスと英国の関係は"A Love-Hate Relationship”だそうです。

 比較という方法は、何かを知るのに有効な手段だと再認識しました。英国が各国とどういう関係をもっているかによって、英国を理解するというのは、有益だと思います。
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2008年11月26日

英国司法制度

 上智大学で受講している、「クィーンズイングリッシュで学ぶ現代英国事情」シリーズ。5回めの授業は司法制度。

 裁判の話を聞きながら、外国映画などでよく見かける裁判シーンを思い出しました。

 日本の裁判シーンと一番違うところは、やはり陪審員の存在でしょうか。日本も一般市民が裁判に関わるようになっていくことがわかっていても、陪審員が負う責任を思うと、今のわたしには大変な制度に思えます。ちなみに、陪審員は英語で、the juryだそうです。12人で成り立つ陪審員のひとりを指すときは、a jury memberというそうです。

 次に違いを感じるのは、弁護士や判事の制度ではないでしょうか。わたしが驚いたのは、司法専門家(Legal Professionals)の分類です。

 大きく、バリスター(barrister)とソリシター(solicitor)にわけらています。バリスターは、法廷で弁論をする資格がある弁護士です。一方、法廷で発言できないのが、ソリシターです。ソリシターは、バリスターと訴訟依頼人との間に立って法律(訴訟)事務を担当します。(バリスターの職場はchambersになり、ソリシターの職場は、一般のオフィスになります。)

 バリスターはジュニアとシニアにわけられ、シニア・バリスターは、Q.C.(Queen's Counsel)と呼ばれ、この地位を経た者の中から判事が生まれます。

 次に、人ではなく、法廷に着目して分類すると、治安判事裁判所(Magistrates' Court。Justice of the peaceの略でJPとも呼ばれる)と刑事法院(Crown Court)にわけられます。前者が民事事件中心で後者が刑事事件中心になります。驚くのは、このMagistrates' Courtは、前歴がないなどの素行のよい地域住民が判事に選任され、司法専門家などとともに運営される点です。

 法廷手続きは以下のとおりです。

 (1) Prosecutor Speech
 (2) Prosecution Witness
 (3) Defense Cross-Examination
 (4) Defense Speech
 (5) Defense Witness
 (6) Prosecutor Cross-Examination
 (7) Final Speech to Jury (Prosecutor and Defense)
 (8) Judge Sum-up
 (9) Jury Decision

 そして、裁判で有罪となった場合、罰金刑などのnon-custodialと呼ばれる刑務所に入らない刑が多くなっているそうです。英国でも刑務所不足だからだとか。罰金のほかは、community service(地域奉仕)やtaggingと呼ばれる刑があるそうです。taggingは、文字通りタグをつけられ、自宅などから出られないようになっているシステムだそうです。どんなタグなのか、見てみたい気もします。

 毎回勉強になる講座です。
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2008年11月14日

英国の議会・政党・政府

 上智大学で受講している、「クィーンズイングリッシュで学ぶ現代英国事情」シリーズの第4回め。テーマは、「議会・政党・政府」

 現在の議会開催場所は、ウェストミンスター宮殿。あの有名なビッグ・ベンと呼ばれる時計塔があります。実は、この時計塔、日本と意外な関係があります。学生時代によく聞いた授業の開始を告げるチャイムは、このビッグ・ベンで正午に奏でられる鐘のメロディが元になっているということです。しかも、それには以下のような歌詞があるのだとか。

All through this hour
Lord, be my guide
That by Thy power
No foot my slide

 そのほか、ウェストミンスター宮殿には、公邸も含まれます。たとえば、Speakerと呼ばれる議会の進行係の公邸。ずいぶんと厳かで華やかなのでしょう。Speakerの地位の高さが伺えます。

 次は、実際の議会の手続きについて。次のような順序で法案は吟味されます。

1.First Reading
billと呼ばれる議案を読みます。(通過してはじめて、actになります)
2.Second Reading
House of Commons(下院)全員で話し合います。
ここが一番重要なステージで、ここを通過すれば、ほぼactです。
3.Comittee Stage
代表の少人数で議案を練ります。
4.Report Stage
Comittee Stageの結果を全員の前で報告します。
5.Third Reading
変更点を確認するため、再度議案を読みます。
6.House of Lords
House of Lords(上院)で議題にかけられます。
否決はできません。反対のときは、actになるのが、1年間遅れます。
7.Royal Assent
形式的なものですが、国王(女王)の裁可を受けます。
ここではじめて、Act of Parliamentになります。

 上院に否決権がないのは、意外でした。また、ケアリー先生の形容を真似るなら、上院では静かにきわめて紳士的に議論されるそうです。下院で、大声をはりあげたりするのとは、対照的とのことでした。

 しかし、この日の授業で一番驚いたのは、議員の候補者の選び方です。小選挙区制で開かれる英国選挙は、各区からひとりしか当選できません。各党がどの選挙区にどの候補者を送り込むのかを決めるそうです。そして、その候補者は、全国の党員から募り、厳正な審査を経て、選ばれます。候補者は、さまざまな職業から、さまざまな強みをもった人たちが選ばれます。

 立候補した人たちは、党員たちの集まる場所で、政策を発表し、政策そのものだけでなく、プレゼンテーション能力などを厳しく評価されます。

 日本と比較してみたとき、それぞれの市民の政治に関わろうとする意識の違いに驚きます。また、世襲制のように見える日本の議員と違い、さまざまなバック・グランドを持つ人を積極的に採用していく姿勢は、日本の国民不在政治とは縁遠いと思います。そうは思っても、自らが変わっていかなければ、という気持ちをもてないのは、やはり「あきらめ」なのかもしれません。
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